第14話 十四
この宿には露天風呂があるらしく、そこで素肌のお付き合いをするのだと、そして、それができる場所があるのは、
確か浴場だけだと思い出す、つまり、彼がいるかもしれないの。
もし、そこにいなければ別のところに探しに行けばいい、とにかく一刻もはやく彼のところへ行きたかった私は、 早速、向かうことにする。
そして向かった先は、案の定というべきか脱衣所であったが、中に入っていく途中で彼の姿が見当たらないことにガッカリした私は、
それでも諦めきれずに探すことにして歩き出したのだがその時のことである。
突然後ろへ引き寄せられてしまい、私は床に仰向けで倒れる。
そうして何が起こったのか理解できないままに、私が困惑していると、目の前に彼がいて、
私の両手を掴むと、それを後ろ手に回されて、拘束されてしまう。
(やばい、捕まった、一体誰がこんなことを、まさか彼がやったんじゃ)
そう思いながらも、私は口を開いて助けを呼ぶと、その直前に口元に布のようなものを押し当てられて気を失ってしまう。
次に目を覚ました時は薄暗い洞窟のような場所で、周りには数人の男がいる、しかも皆一様に下卑た笑みを見せており、
それを見た瞬間、嫌な予感を覚えた私が逃げようとすると手を伸ばせられてしまうため、仕方なく受け入れるしかなく、
そのまま男達に組み伏せられてしまう。
「お願い、お願い、酷いことをしないで! 私は彼の事を愛しているの!」
するとその人は優しい口調のままで話しかけてきた。
私は、それに安堵の溜息をつくのだが次の瞬間に衝撃的な事実を突きつけられることになる。
それは彼の本命が実は別にいることであり、しかもすでにその女性との婚約が結ばれているということだったの。
その話を聞かされた時はとても信じられなかったのだが、同時に怒りを覚えるようになり、
その人の悪口を言ってしまうのですが彼は何故か反論することなく聞き入れるだけで、
最後には、その場を去ることになったのだが去り際に言われた言葉で私は、絶望の淵に立たされることになったのです。
「君のことは嫌いじゃないけど、他に婚約者ができた以上、別れてもらうしか仕方がないんだごめん」
そう言った後、去って行く彼に、声を掛けようとしたが声が出せず、追いすがろうとしても身体が思うように動かず、
結局、どうすることもできなかった私はただ呆然とする事しかできず、その後、数日に渡って自室に閉じこもり続けたのだが、
やがて立ち直れたところで、今後のことを考え始めることにした。
しかし、私は彼の事を諦める事が出来ません。
なので、これからは彼の行動を観察し、その女性がどのような存在なのか、調べることにしたので、
まずは、彼が宿泊している部屋へ向かい、扉を叩いてみるが、返事がないため、ドアノブに手をかけると鍵はかかっておらず、ゆっくりと回す。
その途端、私の耳に聞こえてきたものは男の人達の声と女の人が何かを我慢するような声、
そうして少ししてから水音が響くと今度は笑い声が聞こえる。
私は、その場で固まったまま、耳だけをそばだてていると、次第に話し声が近づいてくるのを感じ、
思わず隠れるようにして身を隠す。
しばらく様子を伺っていると、男性達が下着姿になって浴室から出て行き、最後に残った女性の方を見やるのです。
そうして、彼女は立ち上がると、何かしら呟くと、不意に立ち上がって、そのまま外へ出て行った。
そのあと、私は恐る恐る彼女の後に続くと、そこは男女別になっている共同浴槽、しかも洗い場とあっては私は迷わずその個室へ入って行って、
物陰に隠れると、その様子を眺めながら観察していたのである。
だが、暫くして、先程の彼女が姿を現すと、いきなり衣服を脱ぎ始めてしまう、それを見て私は驚きのあまり言葉を失いそうになる。
(どういう事、まさか私と同じ、もしくは私以上のプレイをしている?
まさかね、きっと偶然のはず、だけど念のために確認だけはしておきましょうか、
もしかしたら違う可能性もあるし、何よりあの子の事が心配だし、だから確かめておかないとね、
でも直接聞くのは怖いわ、ならこういう方法はどうかしら、上手くいってくれればいいのだけれど)
そう判断すると、私は彼女に問いかけることにしました。
そうして、私は、彼女と少しばかり会話した後で、とある事を聞く、
その結果、やっぱりそういう関係だったということが分かり、
それを知った私は、思わずほくそえんでしまい、彼女から感謝の言葉を受けつつ、別れたのであった。
その日、いつものように食事を摂り終え、食後の紅茶を飲み干したところで、 私は彼の膝の上に座っていたのだが、
唐突に背後から抱きつかれると甘い声で囁かれた。
そうして、しばらくの間は、お互いに抱きしめ合っていたが、不意に彼によって押し倒されると、キスを交わす。
何度も、幾度となく交わすうちにだんだん激しくなり舌同士を重ね合わせた状態で絡み合わせると、
どちらともつかない唾液が流れ落ちていき口の端からは、透明な液体が流れたままになっていたのに気が付くも止めることは
できずにひたすら続けていた結果、いつの間にか夜も更けていくのであった……。
……それからどれくらい時間が経ったのだろうか、気が付いたら眠っていたようで、
私は目がさめるとベッドに横になっていて、上半身を起こしてみるといつの間にか、服を着ていた事に気付く。
そのことから、寝ている間に彼が着替えさせてくれたのだということを知り、お礼を言うべく振り返ると、
既に彼は部屋から姿を消していることに気づく。
それを見て、また出掛けたのだろうと察しがついた私は、ベッドから降りて、服に乱れがないことを確認すると、
とりあえず、寝ていた時に付いたと思われる寝汗を拭き取ろうと思って、備え付けられている小さな洗面台に向かい、
蛇口から出てくる水を掬うようにして顔につけると、手ぬぐいを使って全身を軽く清めて行く。
(んー、なんだかちょっと気怠いなぁ、まあでも昨日、あんなことがあった訳だし、
しょうがないか。それよりも早く起きすぎちゃったみたいね、外もまだ暗そうだしさ、
もう一眠りしようかな、ふああ~。あっ、しまった、欠伸した拍子に、つい大きな声を出してしまった、
彼、今頃びっくりしてるだろうな、でも、気にする必要なんて無いよね)
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