第13話 十三
「痛いなぁ、ちょっとくらい良いじゃないか」
叩かれたことが不服だったのか、彼は不貞腐れた様子を見せた。
だけど、ここは譲れない私としては、断固拒否の姿勢を示すべく、頑なに拒む。
とはいえ、いつまでもそうしていては仕方がなかったので、結局、諦めてもらったものの、
その分、私の方に構ってもらえたのが、とても幸せで終始ご満悦だった私なのですが、その最中のことだった。
突然、
「きゃあっ!?」
「な、なんだっ」
突然、地面が激しく揺れたことで、立って居られなくなった私たちは、 その場に座り込んだのだが、どうやら外の方から聞こえてきたようです。
そこで、ひと先ず、外へ出ようという話になり、浴槽から出たのだが、その直後、再び強い衝撃に襲われて、
床に投げ出された私は、痛みを堪えながらも何とか立ち上がろうとした時、突然の浮遊感に襲われたかと思うと
そのまま地面に叩きつけられたことで意識を失ってしまった。
「うぅ……、ここ、どこ?」
目を開けた私が真っ先に目にしたのは知らない天井で、不思議に思いながら、周囲を見回そうとしたのだが、
その直前、何者かによって、私の両手が頭の上で拘束されてしまい、抵抗しようとしたものの全く歯が立たなかった私は、
悔しさを感じながら大人しく従うことに決めました。
その後、程なくして現れたのは何と、彼がいたのです。
しかも、なぜか下着姿な上に、両手両脚を大きく広げた格好で、磔のような状態になっていた。
その姿を見た私は、悲鳴を上げかけたものの、その寸前、口に何かが押し当てられるのを感じると、
次第に声が出せなくなり、喋れなくなってしまったのである!
その後、何が起きたのかは分からないが、次に目を覚ました時には別の場所に移されていて、
私は手足を動かそうとしてみたが、どういう訳なのか動かすことが出来なかった。
そうして困惑しながらもどうにか抜け出そうと頑張っていると、そこへ一人の人物が近づいてくるのが見える。
それは何と昨日、彼と話をしていた人ではないか、私は、そんな事を思いながらその人物を見ていると、
不意にその人が、私を指差しながら、彼に語りかける。
すると、そんな言葉を受けた彼は、呆然としているように見えた。
そうして、しばしの沈黙の後で、ゆっくりとこちらへ向かってきた彼はおもむろにスカートの中へと右手を滑り込ませてくると、
ショーツの上から優しく撫でてきた。
「お願いっ、それ以上はやめて、貴方に酷くされたくないの」
「大丈夫だよ、優しくするよ、君は俺の大切な婚約相手なんだ、傷つけるつもりはないよ、
それにしても凄く綺麗だね」
「ありがとう、そう言ってくれて嬉しいわ」
そう問いかけると、彼は少し考える素振りを見せてから、こう返答してきた。
「分かったよ、じゃあこうしよっか、これから俺たちの子供が出来た時のために練習しておくっていうのでどう?」
その言葉を受けて、思わず目を見開いた私の脳裏に浮かんだものは、当然ながら妊娠という言葉であり、
まさかという思いと共に、私は動揺を隠せなかった。
だが、それと同時に、このまま何もしないよりはまだマシだろうという考えも頭を過っていた私は、恐る恐る問いかけてみる。
そうして、しばらくして、意を決した上での問い掛けに、私は内心ドキドキしつつ、返事を待っていると、そんな私を見つめて彼は口を開いた。
その言葉とは、予想の斜め上の内容であった。
それこそ、本当に私と子供を作りたいと言い出して、更には、その為の行為をしようと、言って来たのである。
その瞬間、私は驚きのあまり固まってしまった。
そうして、私と彼は素肌を晒し、お互いに抱いて、愛し合うの。
翌日、目が覚めると、隣には寝息を立てている彼がいるのですけれど、その寝顔が余りにも素敵で頬にキスするのです。
「愛しています、大好き、これからもずっと、永遠に、傍にいると誓います」
その言葉を告げた後で、私は幸せな気持ちで一杯になった。
それから、しばらくの間、抱き合ったままで過ごしていた私達なのだが、
日が暮れ始めたこともあって、 一旦、宿へ戻ろうと決めたのだった。
そうして、宿屋に戻った私たちは、部屋に入ると、早速、素肌になってお互いを求めあう。
「今日も可愛いね」
「もう、あなたったら、でも好き、大好きなの」
そして、激しい夜を過ごしているうちにいつの間にか朝を迎えていたのです。
その日の夜、いつものように夕食を食べ終わった後、部屋に戻ると、お湯の入った桶とタオルを持ってきてくれた。
そのことについてお礼を伝えると、気恥ずかしい気分になってしまうも、せっかく準備してくれたことに加えて、
背中を流してくれるということだったので、断ることができずにいた私は、観念したように俯きながらベッドに腰掛けると、
身に着けているものを脱いでいきます。
「君は本当に綺麗だ」
「そんなに見ないでください」
そう言って身を捩ると、顔を逸らすのですが、彼はそれを見てクスリと笑うと、
徐に背後から抱きしめてきます。
「君は俺だけのものだ」
「はい、あなたの婚約者になれて、私は、とっても、とぉ~~~~~~ても、とぉ~~~~~~てぇ……、幸せです」
「おいおいまだ途中じゃないか」
そう言いつつも笑みを浮かべる彼、
「だって、本当のことだもん」
そう言うと、私は彼の腕に自らの両腕を絡める。
「俺は君を愛してる、世界で誰よりも」
そんな風に囁いてきた彼の胸板に寄り添いながら、私はこう返す。
「私の方がもっと好きだよ」
そう言いながら見上げると、不意に唇を奪われる。
そして、それから間もなくして、私達は素肌で抱き合いながら眠りにつくのだった。
そうして迎えた翌朝、目覚めると既に隣には彼の姿はなく、私は慌てて服を着替えてから、
彼がいるであろう部屋の前へ行くと、
「失礼します、天宮聖羅と申しま……す」
挨拶の途中で、私は思わず言葉を失う。
というのも、彼が下着姿のまま誰かと話しているのを見かけたのである。
それも、どうやら若い女性を相手にしており、会話の内容は良く分からなかったものの楽しげな雰囲気だった。
(え、あれ、どうして、なんで、彼は私の、私だけの婚約者なのに、ねぇ待って嘘でしょ?)
頭が真っ白になってしまった私はその場に立ち尽くしたまま動けずにいたが、すぐに我に帰ると、
踵を返して急いで部屋に戻る。
そうやって部屋に戻ってきた私は、自分の感情を持て余すと同時に、抑え切れないほどの嫉妬を覚えてしまっており、
気が付けば涙を流すようになっていた。
しかし、いくら泣き叫んでみても、この胸の中にある想いが消えることはない。
そこで私は決意を固めた、彼を私のものにしたいと、他の女のものになる前に私自身の手で奪い取りたいと、
そして、そう考えた時、ある考えが浮かぶ。
そういえば、宿主さんから聞いたことがある。
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