第5話 伍
「よしよし」
そう言いながら撫で続けていると、最初は恥ずかしそうな表情をしていた彼も次第に気持ち良さそうな表情を浮かべてくれたし、
寝付くまであっという間だったわよ!
そんなこともありながら数日が経過した頃、今日はデートをすることになっているため、
朝から気合を入れて準備していた私に声をかけてきた者がいたの。
誰だろうと思いながら振り返るとそこにいたのは、なんと殿下だったの!
「殿下、今日は何処へデートに行かれるのでしょうか?」
「そうだな、取り敢えずカフェに行ってゆっくりお茶を飲みながら話をしようかと思っているよ」
そんな会話を交わしつつ向かった先では、落ち着いた雰囲気のあるお店へと辿り着いたの。
早速中へと入ると店員さんに案内されて席へと着いた後はメニューを見ながら何を注文するか話し合っていたのだが、
最終的に決まったものはこれである……。
それは、パンケーキセットというものだった。
それを頼み待っている間、お互いに見つめ合っていたのだが途中で我慢できなくなったのか、自然と唇が触れ合いそうになった瞬間、
突然声をかけられたことによって我に帰ると慌てて距離を取ったりしながら過ごしていたのだが、
ふと周りを見ると微笑ましいものでも見るような目を向けられていたことに気付く。
「えっ? なにかしら……?」
そう思って不思議に思っているうちに店を出ることになってしまったのだが、
その際会計をしようとカウンターに向かった際に店員からこんなことを言われたの。
なんでも、カップル割引というものがあって二人以上の利用で10%引きしてもらえるという特典があるらしい。
「殿下、カップル割引ですって……」
「へぇー、そうなんだー」
などと呑気に呟いている殿下だったが、それを聞いた私はあることを閃いてこう提案してみたのよ!
それというのも以前、彼と二人きりになった際、こっそりキスをしてみたことがあったのよね。
その時は気付かれなかったけど、いつかは気づかれる日が来ると思うのよね。
だからこそ、今のうちに慣れておこうと考えたわけなのよね……!
そんなわけで覚悟を決めた後、いざ実行へと移すべくそっと近付いていくと不意打ち気味に唇を奪ってやったんだけど、
案の定驚いている様子だったので内心ガッツポーズを決めながら離れようとしたんだけど、
腰に腕を回されて逃げられなくなってしまったので諦めてされるがままになっていたら、今度は彼からキスをしてきたのよね。
しかも、それだけでは終わらず何度も何度も繰り返されている間に段々と意識が朦朧としてきたので抵抗しようとしたんだけど、
上手く力が入らなくてできなかったの……ああ、もうダメっ!
これ以上されたらおかしくなっちゃうよぉ!
「殿下、次は何処へ連れてってくれるのですか?」
「そうだね、まずは洋服を見に行こうと思うんだけどいいかな?」
そんな風に言われちゃったものだから、思わず胸がときめいちゃったわ~。
だって、それってつまりデートって事じゃない!
そう考えただけでも嬉しくなってきた私なんだけど、今はそれよりも重要なことがあるから気持ちを切り替えないといけないわねぇ。
というわけで、そのことについて聞いてみることにした私は単刀直入に聞いてみようと思ったのである。
「殿下は本当に私の事を愛しているの?」
「勿論さ、心から君だけを想っているよ!」
その一言を聞いた私は心の中で安堵の溜息を漏らしたのだった。
ああよかったぁ~!
もしここで違うなんて言われたら立ち直れなかったかもしれないもの。
それにしても、これでようやく決心がついたわ。
そうと決まれば善は急げって言うものね。
ということで、さっそく行動を起こすことにして彼の胸に飛び込んだ後、上目遣いをしながらおねだりするように言ってみる事にしたの。
すると予想通りあっさりと受け入れてくれたので喜びのあまり抱きついてしまったが、すぐに正気に戻ったのですぐに離れてみると、
不思議そうな顔をされたので誤魔化すように笑いかけたのだが効果はなく、むしろもっと見てと言わんばかりに抱き寄せてきたのだった。
その後、殿下と共に洋服屋へ行くと店内を見て回り始めたのだが、どの服を見ても可愛くて目移りしてしまうほどだったが、
特に気になっていた服を何着か購入した後で次に立ち寄った場所はアクセサリーショップだったのだが、そこであるものを見つけてしまったの。
実は以前に一度だけ試着したことがあるのだが、その時に鏡に映った自分の姿に魅了されてしまい、
ずっと見ていたいという気持ちに駆られてしまったほどだったのでとても気に入っていたのである。
しかし、値段が高い上に普段使いできないことから泣く泣く諦めたのだが、まさかこんなところで再び出会えるとは思ってもいなかった私は
迷わず購入することに決めるとすぐさまカウンターへと向かうことにした。
そうして無事買い物を終えた私達は次の目的地へと向かったわけだが、その場所とは雑貨屋であった。
その店で私は、気になる商品があったので思わず手に取ってまじまじと見つめていると殿下に話しかけられたので一旦中断することにする私であったが、
それがいけなかったの。
何故なら、その行動を見ていた彼は何か勘違いしたようで強引に手を引くとその場から連れ去っていってしまったからである。
そうして連れてこられたのは、人気のない路地裏であった。
一体どうしたんだろう……?
そう思いながら首を傾げていると、彼はゆっくりと近づいてきて顔を近づけてきたので思わず目を瞑って身構えていたのだが、
しばらく待っても何も起きないので目を開けてみるとそこには、顔を真っ赤にした彼の姿があり、思わず可愛いと思ってしまったのだった!
だが、それも一瞬のことで今度は真剣な表情になると真っ直ぐに私を見つめながら、問いかけてきたので答えを返すべく口を開いた私なのだが、
それと同時にあることを思い出してしまったのだった。
そう、あれは数日前のこと、偶然見かけた光景に衝撃を受けてしまったの。
なぜならそれは、彼が他の女性と親しげに話していたのだから無理もない話だと思う……しかも相手は女性だけではなく、
男性のことも一緒にいたのだから驚きを隠すことができなかったわ。
それから数日間悩んだ末に出した結論というのは、彼が私のことを好きだということを改めて確認することができたものの、
やはり信じきれない部分があったために、思い切って本人に直接聞いてみたところ、はぐらかされてしまったことから疑念を
抱くようになったというわけなの。
ただそれでも、まだ確信を持てなかったこともあってしばらくは様子を見ることにしていたのだが、そんなある日の事、
彼の方からデートの誘いを受けたことでこれはもしやと思った私は二つ返事で了承することにしたのよ!
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