十
「アメリア、アメリアっ!」
ステラは倒れているアメリアに駆け寄り抱き上げる。気を失っているが土で汚れているだけで怪我をしている様子は見受けられず、ステラは安堵して全身から力が抜けた。
「大丈夫かっ! 本当にお嬢ちゃんなのか?」
後から追いかけて来たニコルも一緒に覗き込むと、正真正銘アメリアだった。ニコルも見つけられたことにホッとしつつ、突然ここに現れた理由が分からず驚きは消えない。そしていつの間にか森の揺れも収まっていた。
「なんだったんだ、一体……」
「わからん。だが今は……姫様が見つかった、それも無事で。それだけでもう十分だ」
安心と喜びが感極まったのか、ステラの声が震えているように聞こえた。ステラは目を閉じたままのアメリアをそっと、しかししっかりと抱きしめた。
その感触のせいか、アメリアの瞼がピクリと動く。ステラ達がじっと見つめる中でゆっくりと青い瞳が開いた。
「アメリア……、アメリア、大丈夫か?」
相変わらず真っ暗な森の中で、アメリアを間近から覗き込んでくるステラの瞳と金色の髪だけは眩しく輝いて見えた。
自分が行方知れずになっていたのはおそらく長くても数時間だろう。しかしたったそれだけでも、再会できたことで無上の安堵が込み上げてきた。
「ステラだー……」
そう言ってアメリアはステラの首にしがみつく。ステラは、うん、うん、と頷くだけだったが、二人にはそれで十分だった。
ステラの背後から見つめていたニコルも、やっと心から安堵の息をついた。
「まったく、心配かけさせやがって」
ステラはアメリアを抱き上げながらニコルを恨めし気に睨む。
「そもそもすぐそばにいたお前がちゃんとお守りしなかったからだぞ」
「それは俺も不注意だった。お嬢ちゃんがあんな簡単に転げ落ちるなら、最初から負ぶって歩いてりゃよかったな」
「……ごめんなさい」
言い合う二人の間で、アメリアが小さな声で謝った。
◇◆◇
探索を始めて早々に目的を達成できたが、サイモスの指示通り時計回りに回って戻ることにした。アメリアは自分が落下した後の話を聞いて更に小さくなる。
「みんなの足を止めちゃったわね。しかもあんな地震まであって、怪我をした人がいないといいけれど……」
それを聞いてニコルはアメリアに問いかける。
「ライラが言ってたんだが、お嬢ちゃんは自分の怪我は治せないって本当か?」
「うん……、前にライラと一緒に山で怪我をしたときに、自分の怪我は治せなかったの。普段ほとんど怪我なんかしないからずっと気づかなかったわ」
「異能力者ってのは、そういうもんなのか? 自分に対しては力を発揮出来ないのか」
「それは……私も分からない。私が知っている異能力者は、オットーとルトだけだから」
頷くニコルの横でステラがアメリアに笑いかける。
「その話を聞いた時は本当に焦ったけど、幸い怪我が無いようだから本当に良かったよ」
アメリアはぎこちなく頷きながら、シンのことを思い出していた。なぜかシンと出会って、ほんの少しだけだが一緒に過ごした時間のことは、誰にも話したくない、シンの存在は知られてなならない、と考えていたのだった。
◇◆◇
移動を続けて、三方面の捜索に出ていた面々と合流した。ほぼ無傷のアメリアを見てライラは半泣きで飛びついてきて、そのままステラと三人は倒れ込み、慌ててアルヴァやカルロス達に助け起こされる。
安心したライラにアメリアは盛大に叱責された。
「ほんっとにお前はそそっかしいな! 落ち着きがなさすぎだ! いいか、もう絶対絶対絶対何があっても迷子になんかなるんじゃないぞ、わかったなっ!」
「はあい、ごめんなさい」
アメリアは素直に謝るが、アルヴァとサイモスは呆れたため息が止まらない。
「そそっかしいのも落ち着きがないのも、ライラのほうがずっと
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