第一章 エーファ王国編  「木枯らし亭」

教会を後にした俺は、

疾風の狼の面々が拠点としている”木枯らし亭”へと向かっていた。

教会を訪れた頃はまだ日が高かったのだが、

辺りは薄っすらと暗くなり始めている。


最後に見送られたシスターから”木枯らし亭”への行き方を教えてもらい、

教会から歩くこと10数分で、

目的地へと辿り着く。


ノエル達はいるのだろうか?


「すみません、”疾風の狼”のノエル達はいますか?」

俺が宿の女将に声をかけると


「ん? あー、あんたがミクかい? 話はノエルから聞いてるよっ! さっきまで部屋でそれぞれ休んでたみたいなんだけど、ルーカス商会の使いが来てね、馬車でどっかにいっちまったよ」

肩をすくめて女将は言った。


そうか、今いないんだな。

それなら彼らを待つ間、自分のスキルをじっくり確認したいな。


「わかりました。あ、部屋ってまだ空いてますか?」


「泊まっていくのかい? 素泊まりなら一泊銅貨5枚。朝・夜メシ付きなら銀貨1枚だね。どうする?」


えーと、今手持ちが金貨2枚と銀貨7枚ある。数日は全然余裕だな。連泊することで安くならないか女将に聞く。


「そうだねー。7日泊まるってんなら、銀貨6枚でどうだい?」


それは助かるな。ノエル達が拠点にしている宿などだから、きっと間違いあるまい。


「では7日分、部屋と食事をお願いします。」

俺は銀貨を女将に支払った。


「あいよ、まいどあり!部屋は二階のつきあたりだよ。そろそろ夕食の時間になるけど、どうするかい?」

女将に聞かれたが


ノエル達に飯を一緒にと誘われていたからな


「疾風の狼達から食事を誘われているので、彼らが帰るまで部屋でまっています。」

俺はそう答えた。


「そうかい?ならそれまで部屋でゆっくり休みな!」

おれは頷き、部屋へも向かったのだった。


部屋へ着くなり、まずは椅子へと腰掛ける。

室内には簡素なベッドと机、今座っている椅子があるだけだ。

窓を開け、空気を入れ替える。


「街灯が灯り始めたな。」


外を眺めると、街には昼間と違う様相が出始めている。

屈強な冒険者達が我先と飲み屋に入っていくのが目に入った。



「・・・よし、ノエル達と合流する前に司祭との話を一度整理しよう」


司祭から洗礼を受け、俺は”クラファン”というスキルを得た。

これはハズレスキルと言われ、随分と落胆してしまったが、今後派生すると言われるサブスキルに期待するしかない。

ただしそれには”クラファン”の使い方がわからなければスキルを育てることができない。

ここは聖王国に確認するという司祭からの連絡待ちになる。

・・・もどかしいが、待つしかないな。



俺は宿へ向かう間に、手をかざし

「クラファン! クラファン!」


と叫びながら歩いていたが、もちろん何も起きなかった。

通りを歩く町人から怪訝な顔をされたが、それを気にする余裕は俺にはなかったのだ。


「あとは、司祭が気づかなかった”ウィンドウ”というスキルだな。これはパソコン内のウィンドウなんだと思うんだけど。」


もしそうであれば、きっと現代特有のスキルとなり、司祭には絶対に理解できないものだろう。

色々と尋問されるのは嫌だから司祭に話を聞かなかった。


「まずはともあれ、確認するか。”ウィンドウ” !」

なにも起きない。


「・・くっ! ならば、開け、窓!」

なにも起きない。


「んがぁ! ”ウィンドウ”オープン!!!」

すると目の前には半透明の画面が表示された。


うおおお!っと驚きの声をあげ、ガッツポーズ。


そして”ウィンドウ”の画面を確認する。

この”ウィンドウ”はパソコンのフォルダと同じようだ。

今はまだフォルダ内には何もないが

メニューバーが画面上部に表示されている。


表示されているメニューは

・ステータス

・収納

・クラファン


「・・・きた!キタキタキター!!!」


”クラファン”があるじゃないか!そうか、ウィンドウ内でこのスキルは実装されていたのか。

あとは”ステータス”に”収納”があるな。

一つ一つ確認していこう。

俺はメニューを指で触れて内容を確認していく。


小一時間程メニュー内を漁り、内容を確認した。

この”ウィンドウ”で出来ることは下記の通りだ。




「ステータス」

言葉の通り、これは俺自身の今のステータスを確認できる。

本来は教会で鑑定を受けない限りは自分のステータスは見れないのだが(もしくは鑑定スキルを保有している人に見てもらう)、

俺は自分で確認ができる。しかも教会の鑑定より見える幅が大きいし、内容の注釈つきだ。

ちなみにこう表示されていた。



三久冬馬/ミクトーマ

・25歳

・種族/異世界人

・称号/赤子なおじさん

 ├レベル・経験に応じて称号が与えられる。


・レベル1(次回レベルまで、あと100)

  ├経験値を取得することで、レベルが上がる。レベルに応じて身体能力が向上する。


・HP 50/50

  ├体力 0になると死亡する。


・MP 100/100(魔力)

  ├魔力 スキルを使用する際に必要な力 魔力が枯渇すると意識を失う。


・ATK 10

  ├攻撃力


・DEF 10

  ├防御力


・SKP 10pt

  ├スキルポイントを消費して、新たなスキルを得ることができる



ユニークスキル
・クラファン 熟練度/レベル1

  ├現代の世界でクラウドファンディングを実施できる


・ウィンドウ 熟練度/レベル1

  ├ステータスの確認、アイテムの収納、クラファンのページ作成


サブスキル

・模写(10pt) ・裁縫(1pt)  ・木工(1pt)





という具合だ。かなり詳細までスタータスがわかる。

まず見て思ったのは、種族が非常に気になるな・・これは知られたくない内容だ。

トラブルに巻き込まれないためにも、ステータスを見られる機会は避けたほうがよさそうだ。

称号については恥ずかしくてしょうがない。

早急にレベルを上げねば・・


レベルやHP等は、現代のゲームと同じような解釈で良さそうだ。


サブスキルについては、SKPを消費することで得られるのかな?

碌なものがないんですけどー。

今後獲得できるサブスキルの数が、増えていくことを期待したいな。


特筆すべきは、”クラファン”と”ウィンドウ”だろう。

これはこの異世界に絶対に存在しないはずのスキルだと思う。

俺しか理解できないスキルだ。

”ユニークスキル”とまとめられているのにも頷ける。

英知の書に記載がなかったのはこのためか。。

おそらく完全に個人専用スキルなのだろうな。

もしかしたら”ユニークスキル”の持ち主は、この世界にも他にいるのかもしれない。



次に「収納」を見てみよう。

収納は文字通り、アイテムを収納できるメニューだ。

ただし収納できる量には制限がある。

現在収納できる容量は”100MB”・・・

まるでパソコンの保存領域だな笑


試しに机の上にあった手鏡を手に取り、

「収納」と唱える。

すると手鏡が消え、収納メニュー内に現れる。




「収納」

95/100MB


・手鏡(5MB)




と表示されている。


「アイテムが容量で表示されるのか。なるほどなー。ならアイテムの価値や大きさで収納容量が変わりそうだな。」


今の収納容量だと、生活用品をまとまたら

すぐに容量が圧迫されそうだ。もちろん手持ちがなくなるのだから便利なのには変わらないが。


今後、身体的なレベルが上がることで、

この収納できる容量数が増えることを期待したい。


あとはこの”収納”が、スキルとして一般的にあるのか、

もしくはそういったアイテムがあるか、調べる必要がある。

もしあれば、特にこの力は怪しまれないだろう。





そして最後に”クラファン”なんだが・・・



これはかなりぶっ飛んだ内容のスキルだった。


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