第6話 王者のポーズじゃ乗り切れない!?

「「……?」」


 ボクたちはフリーズした。

 この灰色メガネがなにを言っているか判らなかったのだ。


「私が、この学園に、やって来たのは、3年ぶり、だからです」


 幼い子に噛んで含めるように言われて、ようやくボクらの頭に言葉がしみこんできた。


「嘘をつくな!」「あ、ありえません!」


 そんな途方もない嘘を誰が信じると言うのだっ!


「学園の校長、教職員、学園生、学園の関係者ならみんな知っている事です。

 王宮の大臣次官、役人、小間使いもいくらでも証言してくれるでしょう。

 更に言えば、貴方のお父上である陛下自らも」

「う、嘘だ! こいつはこのメガネは学園に通っているのだぞ! 学園生なのだぞっ! そんなことあるはずが――」


 ボクは周りの視線を感じた。

 ホール中の来賓達が、哀れみの視線でボクらを見ていた。

 というか、どうして学園生がいない!? ボクの腹心の友らもいない!?

 見たこともないか、どっかで見たことがある程度の大人しかいない。


 ここは卒業パーティ会場だよな?


「同じ理由で私がそそのかした、というのも不可能です。

 殿下と違って私には学園内に取り巻きなどというものは存在せず、貴族の子女とのつきあいも公的なものしかありません。

 ですからそそのかす事など出来ないのです」

「ば、ばかなっっ! だが証拠が! 証拠がっっ! お前の取り巻き達の証言が――」

「彼女らがそう証言したのは存じております。ですが、私と彼女らには何のつきあいもありません。

 そもそも学園に来ていないので、学生会室で命令などできませんしね。

 彼女らが『未来の王妃となる私の意志を忖度したと言えば罪には問わない』と告げられ、証言を誘導されたことも把握しております」


 テレーズは怯えている。


「は、把握しているって……まさか今日のことも事前に……」


 いかん! テレーズに心労をかけてはいかん!

 ここがボクがなんとかするしか!

 懸命に王者のポーズをして何とか立て直すぞ!


 ふんぬっ。たぁっとぉっ!


「だっ誰が誘導したというのだそれはお前の当て推量でたらめ――」

「殿下の握っている証拠とやらは、全て殿下のご友人達が集め作ったものではないですか?」

「そうだ! お前はボクの忠実な友らが――」

「殿下の取り巻き、いえ、忠実な友らは全て貴族の子弟。でしたら私が学園に通っていないことは知っていたはずです。

 それが一人か二人で、更に殿下並みに周りが見えない方ばかりであれば、そういうこともあるかもしれません。ですが全員知らないと言うのはありえません。

 それなのに、なぜそのような証拠を作成したのか。

 簡単なことです。それを見抜けないのは、殿下とテレーズ嬢だけだからです」


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