第3話 勝利のポーズで見送ってやるぜ!

 おお、テレーズ!

 その麗しの名を口にしただけでボクの鼓動は高まる!


 テレーズ! テレーズ! テレーズ!


 ボクの隣にいるべきひとは、彼女のように笑顔がうつくしい華やかな人だ!

 気の利かないグスタフは、側女にすればよろしいと言ったが、真実の愛を側女になどできぬ!

 テレーズ自身もそれでいいと言ってたけど、王妃がいいんだ彼女は。そうじゃなきゃダメなんだ。


 いつでも隣にいて欲しいんだっ!


 彼女は王都一の大きくて評判のいい仕立て屋さんの娘で、学園創設以来初めて入学を認められた平民のひとりだ。

 学園にはとやかく言うヤツが一杯いる。目の前のメガネもそのひとりだ。

 だけどそんなの関係ない!

 だってボクが真に愛しているのはテレーズだけなんだから。

 テレーズ。おお! テレーズ!


 君が世界に降臨してくれて、ボクは生まれ変わったのだ!

 坊やから立派な王太子になっ!


 ボクの覚悟完了を感じたのか、メガネは焦って告げてくる。


「殿下。この場でそれを言ってはいけません」


 判ってるぞ判ってるぞ!

 いつもと同じつめたい声だが内心は焦りまくってるんだってな!


「ふふふ。それはそうだろう! お前にとっては致・命・的!」


 そうさっ。ボクは証拠を握っているのだ。バッチリとな!

 このメガネが不正不義をしたという証拠を!

 ガチンガチンに固めてあるぜ! 忠実な友たちよありがとう!


 灰色メガネよ! お前には心当たりがあるはずだ。


 この場で明かしてやってもいいんだが、腐りきっているすら越えてミイラ化していても元婚約者、満座で恥をかかせるのは気の毒。

 出来るだけ穏便に済まして欲しい、こんなことを明かせばお前が一生嫁にもいけないだろうからと、テレーズが言ってたしな。


 ボクらの思いやりを察して引き下がるがいいっ!


 メガネがキラリと光ると、ボクが抱きしめているテレーズの方を向く。

 テレーズの華奢な肩がびくっと震えたのが伝わってくる。、

 彼女を怯えさせるんじゃなーい!


 メガネがボクの方を向いた。


「そこのテレーズ嬢こそが殿下の真実の愛の相手だという理解でよろしいでしょうか?」

「そうだ! なんだぶあついメガネをかけているくせに、そんなことも確認が必要なほど愚鈍なのか!」


 このメガネ、頭も悪かったとは!

 こんなメガネかけてるのに頭悪いとか終わってるな!

 それとも時間稼ぎか? あがいても逃げ道なんかないけどな。余裕余裕。


 ボクがやさしいうちに、さっさと引き下がっちゃえよ。

 そしたら勝利のポーズを決めて見送ってやるぜ!

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