ep20 吐露
【真言】によって全世界へと届いた声は、ひどく蠱惑的で。
倒錯的で。
そして、欲望に満ちていた。
【私はここに世界を変えに来たんじゃないわ。】
【なんだと?】
二人の声は響く。
この世界のその全てに。
【あなたにまた、告白するためにここに来たの。】
【そんなこと……俺は神になったんだぞ!人々の希望の、平和の象徴だ!それが……】
【神は恋愛しちゃいけないの?そんなこと、世界中の神話に出てくる神が子をなしている時点で何の意味も無い否定よ?】
【だがそれでお前を愛する理由には!】
【ならない?当然ね。でも恋愛は相手の事を理解するところから始めるものよ。】
そう言ってキャンディナは彼に手を伸ばす。
【踊りましょう?今のあなたなら私の気持ちが読めるはず。】
言葉は要らない。
二人手を取り合い踊ればすべてがわかると言うように。
【誰が躍るか!】
【踊って、私の考えを読んで、それで認めてくれればよかったんだけど、どうやら全部語らないといけないみたいね?】
世界中に神の心を聞かせていく。
そんな【悪魔】の所業も、愛に夢中な彼女にはできる。
【どうしてあなたは世界を平和にするのに、不老不死なんて選んだの?】
【人は生きる限り不幸になる!痛みは、体も心も傷ついた痛みはやがて他者を傷つける憎しみとなる!】
【だから?】
【憎しみが痛みを呼び、痛みがまた新たな憎しみを呼ぶ!なら、その先にあるのは消えない不幸の連鎖だ!何故それがわからない!】
【痛いから、悲しいから美しいものは生まれるのよ。人は己の汚さを知っているから、子供の無邪気な姿に美しさを感じ、そして愛を知るのよ?】
【そんなものは一瞬の喜びだ!人は生きる限り、他者と比べ、他者を羨み、他者を蹴落として幸せを感じる!それは不幸を呼ぶものだ!幸せが不幸を呼ぶことがなぜわからない!】
【フフフ……そうね、そうでしょうね。そういう無難な理由を言いたかったんでしょう?あなたも私と同じ、独善的な男なのになんでそんな“模範解答”をだして私を納得させられると思ったの?】
模範回答。
誰かの幸せが誰かの不幸になると言うならその幸せも不幸も奪い去ってしまおう、だから不老不死を与えた。
そんな“行儀のいい答え”が彼の本心なはずがない。
【言い方を変えましょう。なんであなたは不老不死を配り、新たな命の誕生を否定した?】
【は?】
【神様がしていい答えじゃないわよ?ただ、どうして不老不死を配って、新たな命の誕生を不可能にしたのか、その理由が聞きたいの。】
【それは……。】
【あなたにとって、不老不死はおまけだった。あなたは心の奥底で“子作り”に恐怖している、だから新たな命の誕生を否定して、人類が滅びないように不老不死を配った。そうでしょう?】
【はぁ!?】
悪魔は嗤う。
目の前にいる彼の心を知り尽くした彼女だからこそ、それは想像できたのだから。
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