ep19 因果はこうして巡る
【神】と【悪魔】は対峙する。
互いをよく知る関係だからこそ、その間に争いはなく、言葉を交わすにとどめていた。
「……よくやったものだな。」
ショコレータはそう呟いた。
彼女のやったことを理解しているからこそ、その言葉が出たと言っていいだろう。
「【独奏淑女】のイメージが強い財園の姿じゃなく、キャンディナ・キャンディベルの姿で現れることで新たな称号を受け入れやすくしたな?」
「人々の“願い”が魔法を生み、そして人々の願いを叶えるかもしれない人に“称号”を付け、魔術師が生まれるなら、私自身があの放送をしても【独奏淑女】としての認知で終わっていたでしょうね。」
「だから、財園ではなくキャンディナ・キャンディベルとして現れた。」
「うまくいってよかったわ。【独奏悪魔】の称号を認知できたことにも驚いたけど、これであなたと戦えるだけの準備ができた。……フフフ。」
「だが……ここまで頑張った相手に問うのは気が引けるが、あえて聞こう。“世界を作り替える力”をどうやって集めるつもりだ?」
ニコラスは人々の“魔法への憧れ”を利用してゆっくりと時間をかけて変えたから成功した。
ショコレータは賢者の石と【神】という存在の持つ存在の”格”で無理やりこの世界を変えて見せた。
今の世界を変えると言うからには今のキャンディナ・キャンディベルにその力があるだろうか。
それに答えるように彼女は真っ直ぐに立てた指をショコレータへ向ける。
「あなたがいる。【神】になったあなたが望むなら、どんな世界でもかなえてくれるでしょう?」
「……ハハ。ハハハハハ!流石だ!流石だな!財園!」
「今の私はもう、財園じゃないわ。あなたが“本堂道兼”じゃなくなったように、私はもうキャンディナ・キャンディベルなの。」
「あぁ!それで?俺に今のこの“平和な世界”から“不幸な世界”へ変えさせるだけの説得をお前ができると、お前ならできると言うのか?」
「もちろんよ。その覚悟は決めてきた。だからまずは【悪魔】になった私の、私にできる限界をもって、この戦いを始めましょう。」
そう言ってキャンディナはこの戦いを始めた。
「【悪魔の腕】。これが悪辣で、独善的な私の魔術。」
黒い腕が広がっていく。
その腕は、キャンディナの体を包んでいく。
その腕は、世界を汚していく。
その腕は、神をも縛る。
「これは……そうか。」
「フフフ。【悪魔の腕】は悪辣でしょう?」
「触れた相手……今は俺の力を一部奪うらしいが……これじゃあ世界を作り替えるには足りないな。」
「えぇ、私は【悪魔】。人の物を奪い、そして私の思うままにするの。でも、これから先は意地の問題。」
「意地?」
【悪魔】は笑う。
これからの戦いを馬鹿にするように。
この戦いに誇りと言う美しいものが存在しないことを示すように。
「私が欲しかったのはあなたが世界に発信したあのスキル。」
「……まさか!」
【これより、神と悪魔の戦いを開始するわ】
その声は世界に響く。
悪魔に奏でられたそれは。
酷く独善的で。
酷く神秘的な。
【フフフ……こんなにもこの日を待ち焦がれ、あなたの存在に頭の中を埋め尽くされる感覚……これを“愛”と呼ばずして何というのかしら?】
大告白だった。
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