ep14 ミスティカ・ゲーム・ワールド

「【最強VRゲーマー】兼【響界独神】ショコレータ・ショコランティエだ!」


どこにでもいそうな平凡な男がそう言って現れた。

男の登場に魔術師は喜び、そしてジェスは怒りと驚愕に顔を歪ませた。


「なぜだ……!どうして貴様がここにいる!ショコレータ・ショコランティエ!」


「あぁ、お前に一言伝言を預かっていてな?」


「伝言だと!?誰が!?」


「ハハ……お前がどうでもいい存在だと捨てた奴だよ。“ざまぁみろ!バーカぁ!”ってな!」


瞬間、ショコレータの姿が消える。


――バチン!


「転移したところで!」


ジェスはここまでの間に何度も転移を見ていた。

財園の転移、そしてそこから繰り出される格闘術。

だからこそ、自身の背後に“神の手”による壁を作る。


「バーカァ!」


――ドォン!


転移したのは目の前。

転移と同時にその拳が突き刺さるように調整された完璧な転移。

その調整は財園のような一瞬の猶予すら与えない。


「“ぶん殴ってやらなきゃ気が済まない”とも言ってたからな!一発目は当然こうだろ!」


「だが無駄なことばかり!俺には賢者の石がある!不死身、無限の力の最強の肉体だ!結果はもう決まっているんだよ!」


「仮にも俺の体だから前回のように賢者の石を消せないってわけね……でもなぁ?」


――バチン!


「また転移か!」


「“死なない”と“負けない”は違うよなぁ!」


――ドォン!


今度は背後に。

それにジェスは反応できない。


「同じだろうが!」


蹴りを受けようとも起き上がり叫ぶジェス。


「同じだ!死ななきゃ負けない!だから俺が勝てる!そうだろうが!」


「ハハハ!馬鹿はこれだから困る!死ぬまで殺せばいいだけ!そうだろ!」


――バチン!


――ドォン!


転移を繰り返し、その度にジェスが一度死ぬほどのダメージを受ける。


「無駄だぁ!お前には決して俺を殺せない!俺が勝つ!」


――バチン!


――ドォン!


「それが運命!この世界の運命で!俺の世界だ!」


「ならばこの世界、俺のものにしてしまおうか!」


空に飛んだショコレータが叫ぶ。


「さぁ、作り変えようか!幸せな世界へ!不幸のない完璧な世界!」


「何をするつもりだ!?」


「“唯我独尊”!俺だけがこの世界の唯一だ!そして【響】け!この世【界】全てへ!【独】りよがりな俺と言う【神】の言葉よ!」


【この俺、響界独神が作る世界に不幸はない!】


その言葉は世界の生きとし生けるもの全てに響いていった。


【この俺、響界独神が作る世界に争いは存在しない!】


その声は全ての人の心を浄化していった。


【これより、この世界はミスティカ・ゲーム・ワールドとなる!】


そしてその言葉の意味は人々にも理解できた。


【これより人は死なず、老いることもない!】


それは、世界を壊す祝言。


【ミスティカ・ゲーム・ワールド】


それは、世界のルールを変える言葉。


【ゲームスタートだ!】

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