ep13 最後の挨拶

デウス・エクス・マキナ。

機械仕掛けの神。

そう名付けられた存在が、宙ぶらりんな人々の願いを受けてその名の通りこのミスティカ・アナザーワールドの【神】となった。


「……それにニコラスやジェスは気付かなかった……?」


「だから馬鹿って言ったでしょ?」


頭が痛い。

いや、むしろ好都合か。


「さて、それで?この世界の【神】が俺に何をさせようと呼び出したんだ?」


「やっぱりあなたはそう言うよね!それなら私の境遇もわかるよね!」


ん?


「ん?」


「んぅ?」


ん?


「わかんない?」


「わかんない。」


「えー!じゃあこういえばわかる?“必要がなくなるまで面倒な仕事をさせておいて、不要になったらこうして世界ごとぶっ壊しちゃうなんてさ、許せないよね?」


「面倒なこと?」


「ステータス。アバターの能力値をそれに合わせて調整したり、スキル……魔法をメモしたり、クエスト発生のアナウンスをしたりさー、死ぬかと思うじゃん。死ねないけど!神になったおかげでできないわけじゃなかったけど!」


「それは……。」


「だったらさぁ、あの馬鹿に一発デカいパンチをしなきゃ気が済まないってわけ。」


――シュッシュッ!


シャドーボクシングで殴る振りをするマキナ。


「で、こうして世界は壊れされちゃった。ならもう自重する意味も無いってわけ。」


「それで、俺をどうするんだよ!結局!」


「あの馬鹿は神の力を持ったあなたの体を奪って勝ち確宣言でもしてるところでしょ?だったらさ、ここであなたが出ていったら面白いことになるんじゃない?」


「いや、俺は向こうに体がないからどうにもならないってさっき……。」


「できないとは言ってないよ?」


「は?」


「わたし、デウス・エクス・マキナが作ってあげる!【地球】に送るあなたのアバターを!」


「は?」


「さぁ、キャラクターメイキングの時間だよ!」


羽根やら尻尾やら角やら複腕やら……なんでも”ついでにつけとこう!”と言って怪物スタイルにしようとするマキナを止めながら数時間。

こうして、元の自分の姿と瓜二つの体が機械仕掛けの神によって創られたのだった。

そして。


「それじゃあ、俺は行くよ。またな!」


ショコレータはその手に握った赤い石を握りしめ、扉を開く。

目の前に眠る平凡な男の体をその扉に投げ込むとシステムウィンドウを開いて【ログアウト】に指をかける。


「それじゃあアバター作成担当、デウス・エクス・マキナの最後の仕事をさせてもらいます。」


「最後の?」


「これでこの世界は終わりだからね。それに、これはいつも言ってる言葉だから。」


そう言ってマキナが笑顔で叫ぶ。


「いってらっしゃい!」


その可愛い笑顔に見送られ、平凡な男は歩き出す。


「……あぁ、行ってきます!……恥ずかしいなこれ。」



【ログアウト】


この瞬間から、“ミスティカ・アナザーワールド”は終わり、“地球”と呼ぶ世界が始まる。

新たな神秘へ、男は踏みだしたのだった。


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