ep12 ミスティカ・アナザーワールド
「教えてあげる。この世界、ミスティカ・アナザーワールドの全ての歴史を。そして私の復讐を。」
マキナはそう言って語り始めた。
「この世界、ミスティカ・アナザーワールドはニコラス・フラメルとジェス・カーペンタリアによって創られた世界だった。地球の模倣、模型のようなそれにいくつもの命の元を植えた。」
「命の元?」
「人工的に作り出した受精卵。STAP細胞とかって言っていたと思うよ。なんでも……空想上の産物だからこそ魔術との親和性があってちょうどよかったって言っていたけど、それによってこの世界には人間が生まれた。」
「STAP細胞はあるし!STAP細胞はありまぁす!」
「あったから人間が生まれたんだって。そしてそれらはやがて国と呼べるほどに繁栄していった。」
「待てよ!天族や魔族はどうした!?その話だとこの世界には人間しかいないはずじゃないのか!?」
「まだそれが生まれるのは先の話だよ。そう、人間は集まり、国を作り、そして戦争を始めた。」
「……要塞国家キャスリック。あの街の過去の名前がそうだって聞いた。」
「そう、あの国だけは地形によって守られていたから残った。だけどそれ以外の国は滅び、そしてこの世界には二つの大きな国とキャスリックだけが残った。」
「大きな国……。」
「そう、その大きな国は最後の覇権国家となる為に互いに大きな力を求めていた。」
「大きな力……魔術?」
「いいえ、この世界に人間が生まれ、そして戦争という不幸が“願い”を呼び、彼等は生まれていた。」
「彼等?」
「人々の願いを叶える超越者、【神】。そして他者を害する力を与えてくれる存在、【悪魔】。」
「【神】と【悪魔】?」
「そう、そしてその力を二国は求めた。ある国は【神】の力を奪うため、“ゴッド・パレス”へと侵攻し、その命を奪った。【神】の眷属である【天使】と共に。」
「神の心臓……キャスリックにあったのはどうしてだ!?神の力が一番宿っていそうなものじゃないのか!?」
「彼等は力をその身に宿すために、本能的にその肉を喰らった。でも臓器を食べる習慣のなかった彼等は【天使】と【神】の臓器を地上へと捨てた。結果、それらは【神秘の欠片】もしくは【神の遺産】と呼ばれた。そしてそれを食べた動物たちが魔物となって人々を襲うようになった。」
「まて、それってつまり……。」
「天族は天使や神を食べた人間たち、そしてその末裔って事。でも天族が生まれてこの世界は天族のものになりましたって訳にはいかないのもわかるでしょ?」
「もう一つの国は周囲に現れた魔物を倒さないといけない……【悪魔】の力を借りた?」
「いやいや、敵国が【神】の力をその身に宿したんだよ?自分たちもそう言う力が欲しいと願った。当然でしょ?」
「【悪魔】も人間に殺された……?そう言えばデビル・フロントの首都は“デビル・グレイブ”か……。」
ペンツァーとバンデットが参加した首都での格闘大会、首都の名前は“デビル・グレイブ”。
直訳で悪魔の墓。
「そして同じことが起きた。悪魔の力を得た国と神の力を得た国。彼等は今なお争い続けている。」
これがこの世界の、ミスティカ・アナザーワールドに起きた歴史だと言うのか。
「さて、ここで問題です!じゃじゃん!」
目の前にポンと音がしそうなボタンが現れる。
「あ、クイズゲーム的な?」
「この世界、ミスティカ・アナザーワールドは歴史の結果、【神と天使と悪魔】が居なくなってしまいました!それでは“自分たちを救ってくれる超越者”という願いは今現在どうなったでしょう!」
「は、あぁ……賢者の石と同じだろ。願いは存在するがそれを解消する魔法が生まれず宙ぶらりんな状態になった。」
現実世界側の“死にたくない”と言う願いによって生まれた賢者の石がその存在を消された結果、その願いが何かに使われている状態ではなくなり、宙ぶらりんになっているように、こちらの世界のその願いによるエネルギーも霧散しているのだろう。
「ブッブー!問題には“今現在”ってついているのがヒントだよ!」
「……でもそんな都合のいい超越者、いや、願いが魔法になるんなら誰かが願って【神】や【悪魔】がまた生まれたとか?」
「ブッブー!それじゃあ大ヒント!私の名前は何だった?」
デウス・エクス・マキナ。
「……まさか!?今はお前がその願いを受け取る超越者になっているのか!?」
「ピンポンピンポーン!馬鹿がデウス・エクス・マキナなんて名付けた結果私がこの世界の【神】になりました!ってわけ!」
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