ep11 信頼、そして崇拝
ジェスと魔術師たちの戦いは続いていた。
その音は、衝撃は東京を、世界を揺らしていた。
「全く、いつまでこんなことを続けるのやら。」
ジェスは呆れながらそう言った。
眼下には何度も攻撃を繰り出しては疲弊して休憩をとる魔術師たち。
「フフフ……それにしても、いくら賢者の石で回復できると言ってもそんな体たらくで神を名乗るつもりなのは笑えるわ。」
財園は未だ、ジェスへ攻撃を繰り返しながら皮肉を言う。
「……?何のことだ?倒れているのはお前たちで、傷一つついていないのは俺だぞ?」
――ズバァ!
砂がジェスの右肩を抉り取る。
「こんな体たらくってのは間違いねぇな!これで神を名乗るのはちょっと俺には恥ずかしくてできねぇよ!」
――ドン!
ジェスの“神の腕”がバンデットの体を捕らえ、地面に投げ落とす。
「だから何だと言うのだ!何が可笑しい!」
倒れたバンデットも、財園も、そしてアルアやコジロウですらジェスをみて笑っていた。
「だってさぁ……ねぇ?」
「え?そりゃあ、ねぇ?」
アルアとペンツァーは顔を見合わせている。
「ベヘリ、あいつらなんで笑ってんの?わかんないんだけど?」
シェリアがベヘリにこっそり耳打ちするとベヘリが耳元で何かを言う。
「あぁ!そっか!確かに!」
シェリアはジェスを指さし、大きな声で笑い出す。
その笑い声につられたのか、他の魔術師も笑ってしまう。
「……だから何だと言うのだ!何が可笑しい!何故笑う!」
ジェスの叫びに答えたのはシェリアだった。
「だってさ、どう考えたってショコレータの方が強いじゃん!」
その言葉はジェスには理解しがたいものだった。
「はぁ?いや、俺は賢者の石を持っているのだぞ!?永遠の命、無限の力!そして神の力もある!それがどうしてあの男より弱いと言える!?」
そう、ここにいる魔術師は全員、知っているのだ。
ショコレータ・ショコランティエという“最強VRゲーマ―”のことを。
そしてもし、彼がここに居ればどうだったのかと。
「ショコレータが、もしもショコレータが私達全員とこうして戦ったら、どうなると思う?」
「何を……。」
「指の一本、いいや、たった一度の攻撃すらショコレータには当たらない。そして自分でも理解できないままに敗北という結果を叩きつけられる。だからわかるんだよ。」
その先は財園が言った。
「体のほとんどを吹き飛ばされ続けるあなたは絶対に彼に勝てない。それがたとえ、賢者の石と神の力を持つあなただとしても。」
「ふざけるな!俺は今この世界で最も強いんだ!その俺を馬鹿にして、否定するんじゃない!そもそも【最強VRゲーマー】ではなくなったあの男は財園に何度も迫られているだろうが!」
「そうだな。お前を否定するのはそいつらじゃあない。」
その声は、とても平凡な男の声だった。
「お前を否定するのはこの俺。」
平凡な姿をしていた。
「【最強VRゲーマー】兼【響界独神】ショコレータ・ショコランティエだ!」
どこにでもいそうな平凡な男がそう言って現れたのだった。
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