ep10 デウス・エクス・マキナ
ショコレータはその言葉を反芻した。
「人造天使……。」
「誰が作ったのか、それはもうわかってるでしょ?」
ポンポンとケーキを空中に生み出しては大きな口を開けてそれを食べるマキナ。
「ニコラス・フラメル、そしてジェスだな?」
「そ、あいつらはこの世界を作ったはいいけどゲームとしての体裁を保つ方法を考えてなかったわけ。そこで作ったのがわたし。人造天使のデウス・エクス・マキナってわけ。」
「……いや、名付けがひどくないか?“機械仕掛けの神”なんて名付けを人造天使につけるのは少し違うだろ?アンゲルス・エクス・マキナならわかるが……。」
「それだけ適当だったってだけでしょ。わたしにやらせたのはこちらの世界を歩き回るための肉の体、つまりアバターの作成とそのアバターに力を与えて魔術師になるのをサポートすること。それさえしてくれればどうでもいいってわけ。」
ポンポンとジュースを出してそれをコップに注ぐマキナ。
「コクコク……ぷはぁ。でもそれだけ適当なことばっかしてたからこうしてわたしが好き勝手出来るってわけ。」
「今地球はどうなっているんだ?突然ログアウトできなくなったのはお前がしたのか?」
「馬鹿が馬鹿やっただけ。ミスティカ・アナザーワールドを破壊してあなたの体へログインしてる。」
「ログイン!?いや待て、向こうの体は俺の生身の体だぞ!?」
「ミスティカ・アナザーワールドは異世界だって言ったでしょ?そしてアバター、つまりこちらの世界の肉の体はわたしが作った“魂のない体”ってわけ。地球の体から魂をこの世界へ転移させてアバターに入れることであなたはこうしてミスティカ・アナザーワールドを冒険できるの。その間向こうの体はただの何も入っていない肉の体。そこに馬鹿の魂が入ればあなたの体を自由に動かせるってわけ。」
「だが、それなら俺はどうすればいい!……そうだ、ジェスの体だ!ジェスの体に俺を移せば俺は地球に帰れるんだろ!?」
「残念だけど馬鹿は自分の体を壊してるからもう使えないね。」
「ガッデム!終わりじゃねぇか!俺はもうミスティカ・アナザーワールドと一緒に死ぬしかねぇじゃねぇか!」
ショコレータのその嘆きを、マキナは笑いながら受け止める。
「でも馬鹿が馬鹿やってくれたおかげでそうもいかないんだよね。」
それは希望の言葉だった。
「馬鹿はこのミスティカ・アナザーワールドのことを知らなかった。だから私にデウス・エクス・マキナなんて名前を付けて、そして一種の願いを享受する立場にしてしまった。」
「……それは一体?」
「教えてあげる。この世界、ミスティカ・アナザーワールドの全ての歴史を。そして私の復讐を。」
その顔は、醜く歪み、それでなお、美しさを損なわず、思わず跪いてしまいそうになるほどの可愛さを持っていた。
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