ep7 新たなる神の降臨

財園和雨は事態に混乱し、様々な場所へ転移を繰り返していた。


「……どこ!?どこにいる!?」


――ブゥン!


――ブゥン!


「どこに!?いったいどうやって!?」


財園の匿っていたショコレータが消えた。

もしも彼が転移で外へ出ただけならばあまり気にすることでもない。

しかし同時に消えたミスティカ・アナザーワールドの筐体。

そしてなにより。


「なんで体内に埋めたGPSの反応が消えるのよ!?」


ショコレータの体内に埋めたチップは彼の健康状態をモニタリングする物だけじゃなく、彼の居場所を知らせるためのGPSの役割も与えられていた。

その反応すら消えたのだ。

まるでこの世から彼と言う存在が消え去ったかのように。


「この星じゃないどこかへ……?どうやって?」


つい最近、ニコラスが死んだあの日にそれを見ていたにもかかわらず、すぐには思い出せなかった。

そしてそんな精神状態の財園が突然現れたショコレータの反応に向かって転移するのは必然だったともいえた。


――ブゥン!


「見つけた!いったいどうやって、何のために!」


そう叫んだ彼女の目の前に現れた男は、確かに財園和雨自身が求めていた男だった。

星空のようにきらめく黒髪と陶磁器のような白い肌。

黒く染まった眼。


「まずはお前からだ。“神の手”!」


透明な巨腕が財園を襲う。


「……あなた誰!?彼じゃないでしょ!?」


「おいおい、こんな特徴的な顔を忘れたのか?」


そう言いながら透明な腕を振り回す男。


「彼はそんなテレフォンパンチを撃つ男じゃないって言ってんのよ!」


無言で男の背後に転移する財園を待ち構えていたかのように蹴り飛ばす男。


「そんな適当なキックもしないって!」


転移して早々にその足へ踵を落とす。

そのまま体をねじって反対の足で回し蹴りを放つ。


――ドゴ!


蹴りは男の腹を貫通し、その脇腹の肉と脂肪をばら撒く。


「無駄な努力はやめたまえ、俺は不老で不死なのだから。」


男は懐から赤い石を取り出す。


「……賢者の石……!」


ニコラスが信頼していた圧倒的な力。

財園自身その恐ろしさを痛いほど理解していた。

無限の回復力とエネルギー。

ショコレータがその存在を“神”の魔術によって消し去ったそれが今、目の前で彼と同じ姿をした男が持っている。


「まさか……!」


「そうだ、俺はこれで“神”の力も!ニコラスの“魔術”も手に入れたんだ!もう俺を邪魔する奴はいない!できるはずもない!」


「ジェス……!」


「そうだ、これからこの星は俺、ジェス・カーペンタリアのものになる!」


――ドォォォォォォン!


轟音と共に東京の大地に穴が開く。

世界に響く轟音を轟かせて。

全ての人類に新たな神の誕生を教えるように。

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