ep4 魔術封印

戦闘開始と同時にショコレータは背後を取るために動く。


「“テレポート”……!?」


財園の使うものを“真言”で再現した。

……はずだったのだ。


「悪いな!陣の中は移動系スキルが使えないようになってんだ!」


物陰から出てきた天族たちが組んだ陣。

それはスキルを制限するものだった。


「だったら力づくで陣を出ればいい!」


――ガキィン!


「そう簡単に外に出すと思うなよ!魔術師!」


ハーマレスが大きなメイスで殴りかかってくるのをなんとか防ぐ。


「“神の手”!パワーで俺が負けるかよ!」


透明な腕による打撃でハーマレスへ強力な一撃を加える。

それに怯むことすらなくハーマレスは接近してメイスを振るう。


「ハッ!俺に勝てるのは財園ぐらいだよ!お前みたいな三下が俺に勝てるものかよ!?」


「そんな奴知らねぇよぉ!」


――ガキィン!


メイスが不可視の腕とぶつかり合う音が響く。


「何度そのメイスが耐えられる!お前の腕が耐えられる!?時間の問題だ!分かれよ!」


「ハハハハハ!お前こそあとどれだけそのスキルが使えると思ってる!そら、もう時間だ!決着のなぁ!」


――ドゴッ!


その音はショコレータの体から響いた音だった。

メイスが腹に深く食い込み、その衝撃で体が数ミリ浮かび上がる。


「ガァッ!……“神の手”が消えた!?」


驚愕したショコレータの様子を舌なめずりでもするかのようにじっくりと見たハーマレスが楽しそうに話す。


「何が起きたかって?話すわけねぇよなぁ!でも話してやる!俺、おしゃべりが好きだから、なぁ!」


再びメイスを振り抜き、ショコレータを吹き飛ばしたハーマレスがショコレータにゆっくりと近づきながら話す。


「お前が【神】を名乗った時点で俺の部下たちは陣を【完全魔術封印陣】へ変えたのさ!その名の通りこの中じゃ魔術の類は使えねぇ!そしてそしてぇ!お前みたいな魔術師は身体能力で俺達天族には決して勝てねぇ!つ・ま・りぃ~?」


「ぐっ……。」


「お前はここで死ぬってわけだ!」


――ドゴォ!


「ペッ……なるほどな、確かに天族の方が身体スペックは高いらしいな?」


「強がりもこうしてみる分には可愛いもんだなぁ、おい!さっさと死んで、その体俺に寄こせよ!」


「隊長!俺達にも分けてくださいよ!」


「そうですよ!俺たちの陣があるからこそこうして楽に【神】を狩れるんすから!」


「おーおー、お前ら好き勝手言うねぇ?ま、まずは俺がこいつを殺してからだけどな!」


とうとうショコレータの傍までやってきたハーマレスにショコレータが一言告げる。


「それで?それはお前が俺に勝てたなら、って仮定の話だろ?」


「あぁ?」


「お前が俺に勝てる根拠が“人間の体じゃ天族に勝てないから”って言うなら、まずはそれをひっくり返してやるよ。【もしも私が】!」


白銀茨のエンゲージリング。

インセールの残したアイテムが光り輝くとともにショコレータの体に尻尾と強靭な足が与えられる。


「……それは、その姿は!?」


天族の相手に相応しい姿。

天族と長い歴史の中、ずっと争い続けてきたその姿。

尻尾と強靭な足。それは魔族の姿だった。


「魔族だったなら……そんな“願い”が俺を強くしてくれるらしいぜ?」

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