ep3 奇想天外
強い光に目を瞑り、再び目を開いたときには既に別のエリアに来ていた。
「……ここが“ゴッド・パレス”。天族の国……。」
「そうだぜ、魔術師さんよぉ!ここは天族の国だ!出ていってもらおうか!」
そう言って出てきたのは大きな巻き角と大きな翼。
天族らしい姿の男だった。
「……おいおい、そいつは【金壁八双】プロモテウスの剣じゃねぇか!あの男やっぱり死んでんじゃねぇかよ!」
「プロモテウスを知っているのか?」
「あーあー、可哀そうな男プロモテウス。これもぜーんぶ己の甲斐性のなさが招いた結末ってやつだけどな?」
男はプロモテウスをあざけるように語り始めた。
「プロモテウスにはかっわいい婚約者、インセールが居たんだけどな?戦ばかりに精を出して自分の嫁に精を出さなかったせいで半分野郎に寝取られたんだよ、馬鹿みたいだろ?」
「半分野郎ってのは【銀纏星将】ゲンデイールか?」
「おっ!半分野郎も称号持ってたのか!あー、もしかしてプロモテウスの野郎をやったのは半分野郎か?だとしたら最後まであの半分野郎に勝てなかったのか?」
男はゲラゲラと腹を抱えて笑う。
「戦を終えて家に帰ったらちょうどベッドに居た二人と鉢合わせたもんだから半分野郎を殺そうとしたプロモテウスの野郎は自分の婚約者と戦ったんだよ!」
「うわ、可哀そう……。」
「可愛そうなのは女の方だぜ?男が帰ってこねぇもんだからちょうどいい男で発散してたら男が帰って来て戦う羽目になったんだからな?しかもあの【金壁八双】とな!」
「それでゲンデイールはここから逃げたのか……。」
「その剣を使ったならわかるだろ?そいつを使えばここから逃げることが出来る。非戦闘員のインセールが剣を持ってるはずがねぇ。プロモテウスの剣を半分野郎が使って逃げたんだよ!」
「は、いや待て、インセールがプロモテウスに勝ったのか!?」
「違う違う!お前もさぁ、少しは考えろよ?プロモテウスの野郎は半分野郎を殺したい、インセールは半分野郎を守りたい。そしてその場で一番強いのはプロモテウス。」
男はそこでたっぷりと時間を取ってから続きを話した。
「……刺したんだよ!プロモテウスが半分野郎を刺そうとしたその剣はインセールにぶっ刺さったのさ!そして突き刺した剣からプロモテウスは手を離してしまった。」
「まてまて……それじゃあ……。」
「インセールに刺さった剣で半分野郎は地上に飛んだ!刺さった剣ごとな!飛んだ瞬間インセールは腹から血を流して死にかけた!それでもなお、インセールは半分野郎を愛した!当然だ、自分を愛さない男より自分を愛した男を選ぶ!当然の話だ!」
「待てって言ってんだろうが!インセールは翼を切られて地上に捨てられたはずだ!ゲンデイールが居ないならインセールの羽は誰が切ったんだよ!」
「プロモテウスさ!それから一度も戦に向かわずインセールを愛したくせに、それでもなお自分を愛さないインセールをプロモテウスは痛めつけた!羽根を切り、角を削り、足を折り、腕を折った!そうして自分への愛を囁かせようとしたんだ!力でな!力しか取り柄のない男はそれしか手段を知らなかった!そんなことをした時点で女が自分を愛してくれるはずなんてねぇのになぁ!」
「DV野郎だったのか……いや、それもこれもインセールの浮気が原因……。」
「そうかぁ?プロモテウスの野郎が戦狂いじゃなきゃうまくいってたと思うぜ?……まぁ、自分を愛さないインセールをこの空から地上に堕としたプロモテウスはまさしく狂ったやつだけどな?」
「いやぁ……それでも事の発端はインセールだろ?プロモテウスは狂っちまったんだからやっぱり原因になったインセールが悪いと思うけどなぁ……。」
「いやいや、非戦闘員の婚約者がいて戦狂いだったプロモテウスがやべぇ奴だよ、少なくとも俺はそう思うぜ?」
「この剣にそんな縁があるなんてな……。」
「おっ、そうだな?でもなぁ、こう言っちゃあなんだけどさ、お前もおとなしくしてくれてて助かったよ。」
男が手をあげると10人近い天族が物陰から姿を現した。
「この剣は確かに移動手段だがな、天族以外にそれを利用されちゃあ困るわけ。ちょっと時間はかかるけどさ、こうして陣を組めば使えなくすることが出来るってわけよ。」
ぐるりと取り囲んだ天族たちは何かしており、結界のようなものに囲まれているのがわかった。
「おいおい、嵌められたか?」
「俺が話し好きなのと、プロモテウスの話は事実だぜ?あぁ、あと、もうお前は逃げられないってのも事実だな?魔術師!」
「【響界独神】ショコレータ・ショコランティエだ!ちゃんと名前で呼んでくれよ!」
「【神】……神か!そうかそうか!いいじゃねぇか!今日は御馳走だぜ!てめぇら、気合入れろよ!【神】なんて次いつ食えるかわからねぇんだからな!」
「名前ぐらい聞かせろよパタパタ野郎!」
「【器創添害】ハーマレスだ!その体、俺に寄こせよ!」
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