ep24 独り奏でる淑なる女
財園和雨は急いで文章を打ち込んでいた。
彼が自分の部屋に転移した後、すぐにミスティカ・アナザーワールドを起動したことから彼の状態をなんとなく察していたからこそ、予想も含めた現在の状態を書きだしていたのだった。
「……こんなところかしら。」
現状把握
・ショコレータ・ショコランティエ(本堂道兼)は地球で既に称号を得ていた。
・その称号は【最強VRゲーマー】である。
・本堂はその才能によって特別に称号を得ていた。
・ミスティカという別世界にてさらに称号を得た結果二重に称号を持つ事になった。
・【響界独神】によってその人格も、体も歪み、人外になってしまった。
・
元の彼に戻るには
・ミスティカを破壊し、【最強VRゲーマー】という称号を強くアピールしていく。
・本人の才能を利用し【最強VRゲーマー】へと戻す。
これから行う事
・ミスティカを持つジェスを探し出し、ミスティカを破壊する。
・本人に【神になりたくない】と思ってもらえるように過ごしてもらう。
「はぁ……。」
自分は凡人だ。
これだけ情報を得られた今でさえ、どう動くのが正解なのかわからない。
財園グループがかつてないほどに力を持っている今でさえ、彼一人を救う手段がわからないのだから。
称号を捨てる方法があれば簡単なのに。
「……フフフ。フフフ。……そうよ、そうよ!」
――バン!
机を叩く。
勢いよく立ち上がった財園は笑い出しそうになる気持ちを抑えながら口に出して自分の思考の間違いを確認する。
「称号は魔術師の証。魔術師とは即ち“大衆の願いを捻じ曲げかねない強烈な個”であることを世界に認知された人間。」
ミスティカが別世界である以上、その大衆とはだれの事だったのか。
「そう、“配信”よ!ニコラスは配信を利用して世界中の人間にプレイヤーを認知させた!だから私が一番最初にRANK5になった!」
地球の人間がプレイヤーをどう認知するか。
それがRANK5へと至った理由だったのだ。
「地球では私の方が一般人含めて認知されていたから先にRANK5になった!そして私のカミングアウトであの日の映像は世界中に注目された!だから彼は称号を得た!そして傍に居たシスターが、そしてさらにしばらくしてからバンデットが称号を得た!」
あの日の映像の中心人物だった自分と彼。そして彼を救おうと動いたシスター、最後に少し顔を出したバンデット。
順番に称号を得ていったのだ。
そしてそうなると当然。
「アルアとペンツァーは私とよく一緒に行動していたから称号を得た!全ては“配信”のせいで地球上の人間に認知されたから!」
だとすれば。
どうすればいい。
答えは一つ。
「“配信を止める!”それで人々の認知から彼を忘れるようにいろんなイベントを起こす!」
イベントなぞ、財園グループの力をもってすればいくらでもできる。
人々に幸せな記憶を与えてやろう。
幾らでもくれてやろう。
金なんてまた稼げばいい。
「まずは日本国内のネット環境を潰す!それで新たに彼の情報は上がらなくなる!」
そしてそれだけではいかない。
彼をミスティカ・アナザーワールドへログインさせない。
その為にミスティカ・アナザーワールドを破壊する。
「フフフ。思ったより簡単じゃない……ミスティカ・アナザーワールドを破壊するだけで全部解決するんならもうこんなものどうでもいいわ!」
女王として君臨していた椅子を蹴り飛ばす。
その覚悟を示す。
もう彼女は止まらない。
【独り奏でる淑なる女】はもう止まらない。
自分の力で。
自分一人の力で彼を救って見せると決めたのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます