ep21 光の勇者
時間は巻き戻って沖縄。
バンデットとアンドレは対峙していた。
「ペンツァーが死ぬ前にお前を倒す!」
叫び、アンドレには激昂して冷静でいられないという“ポーズ”を取りながら頭の中でしっかりと考える。
「この勇者アンドレに勝てるとでも!?」
目の前の男が行ったスキル……いや魔術は二つ。
ペンツァーの蹴りを受ける前に自分で後ろへ吹き飛んだもの。
そして一瞬のうちに周囲の人間が腹から血を流して倒れた魔術。
どちらも不可視の何かによるものだった。
「正義は必ず勝つんだよ!」
アンドレが光る剣と共にバンデットへと駆けだしていく。
「なんで海外の魔術師は皆剣が光るんだよ!?」
ブン!という音がするほど力強く古い掛かるアンドレ。
「まぁまずは“無刀流・砂丘”!」
周囲一帯が砂へと変化する。
これで近接攻撃主体の相手は砂に足が獲られてまともに剣を振るえない。
「オーゥ!でもこれは“知ってる”ぜ!お前らの配信はきちんと履修済みだからな!」
そう言ってアンドレは靴を脱ぎ捨て素足で走る。
「素足の方が短時間ならグリップが効くよな!だがなぁ!“無刀流・砂塵”!」
さらに砂嵐が追加される。
砂粒の一つ一つが視界を潰す障害物となる。
そしてその砂粒はただの障害物じゃない。
――ザザザザザ!
アンドレを砂粒が襲う。
砂粒は集まり、震え極小のヤスリでできたチェーンソーのようにその体を削り取る。
四方八方から襲い掛かってくる砂の刃。
この波状攻撃を一度でも回避に失敗すれば死ぬ。
「勇者に小細工は通用しない!」
アンドレが駆ける。
真っ直ぐにバンデットのいた場所を目指し。
その正面に置かれた砂の刃をアンドレは回避しない。
「……風の鎧か!」
その様子を見ていたバンデットがアンドレの魔術を見破る。
アンドレの周囲には“砂塵”が漂わない。
そしてその鎧は流れるように砂粒の一つ一つを受け流す。
「ならば!」
“黄砂”でできた大太刀での攻撃。
アンドレの踏み込みに合わせたカウンター。
見えた。
右肩に力を籠め、左へ振り下ろす袈裟斬りの構え。
その初動を見てバンデットは大太刀を抜き放つ。
――バァン!
風の鎧を抜いた感触がある。
直撃コース、腹を一文字に切り裂いたのがわかる。
「……!?お前……“水使い”かよ……!?」
バンデットがその言葉を残して倒れる。
「勇者が風なんて地味な属性なわけないだろ?」
ゲームに例えたそのやり取りと共にバンデットの腹には細かい切り傷が一気に現れる。
そして対するアンドレは自分の服についた“泥”を落とす。
「でもまぁ、褒めてあげるよ。“これ”が水だと気づいたのは君が初めてだ。惜しむらくは気づくのが遅すぎたことかな?」
「“そうだな。そしてお前の敗因はさっさと逃げなかったことだ。”」
アンドレはその声が誰のものか理解していた。
だからこそ、警戒と共に振り返ったのだった。
「ショコレータ・ショコランティエ……まさか魔王財園の前に戦うことになるとは思ってなかったよ。」
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