ep19 イカロスの翼は神に焼かれ墜ちる
それは太陽のようだった。
ニコラスがアルアのビームを球状に変化させ、空へと放ち、降り注ぐその瞬間、光は一つに集まり、太陽のように東京の空を照らしたのだった。
「【選民崇拝】シスター・ピースフル・ワールド!世界平和のために推しと一緒に参上、です!」
安そうなシスターコスに身を包んだその少女。
それを忌々しい目で見つめるのはニコラス。
だが彼の視線はその奥に佇む男に向いていた。
「ショコレータ・ショコランティエ……!貴様……俺の魔術を!」
「そんなことよりいいんですか?あなたのPOWER……こっちだと魔力とかそんな名前なのかな?すっからかんなんじゃないです?」
シスターが“エクスチェンジ”で交換したのはニコラスとシスターの状態。
シスターは自身の体中に傷をつけ、出血していたのが黒いシスター服に染み込んで光に反射してテカテカと光る。
そしてニコラスの体には全身深い傷が、さらにシスターがほとんどの魔力を使い切っていたためにもう魔力も無いはずだ。
「それがどうした!こっちには賢者の石があるんだ!魔力ぐらい幾らでも出る!傷だってこの通り!」
ニコラスが手を振るうと同時に傷口が盛り上がっていき……。
「……何故だ!?なぜこんな簡単な魔術が……!?」
それは途中で止まる。
「致命傷ね。……フフフ。どうやら勝利の“神”は私に微笑んだみたい!」
既に流れ出ている血を見て財園は勝利を確信する。
「俺の賢者の石は!?」
そう言ってニコラスは手元に賢者の石を取り出した。
しかしそれは取り出すとすぐにぐずぐずに溶けたチョコレートのように崩れていった。
「まさか!?なぜ俺の賢者の石が崩れる!?」
「“神の名の下に、賢者の石などという物質は存在しないと、俺が決めたからだ”」
声が響く。
その場にいる誰もがその声に意識を向けさせられる。
「ショコレータ・ショコランティエェ……!」
怨嗟の声がニコラスから洩れる。
「ジェェェェス!お前は俺を連れてさっさとこの場から消えろ!お前の魔術ならそれができるだろう!?」
「無理だ……ニコラス……。」
ジェスの傍には既にアルアが人形腕を展開していた。
「シスター……その人を帰らせてくれる?あまり人目に晒したくないの。」
「嫌です!こんな状態の推しを放っておくなんてできません!」
財園の言葉にシスターはすぐさま否定を返す。
突然転移してきた彼の望みでここまで来たが、別人と言えるほどに美丈夫となった彼の姿と、その目が黒く染まっている様子を“まともじゃない”と判断するのは当然の事だった。
そして彼を抱くように抱えて逃げる。
「待ちなさ……!?」
「隙だらけだ、馬鹿め!」
ニコラスから目を離してしまう。
その一瞬、ニコラスは極小の針を飛ばすような魔術で財園を狙う。
「和雨さん!“ハンドクラフト”!」
「“ディメンションバースト”!」
ニコラスと財園の間に人形腕の壁ができる。
それと同時にニコラスの体が爆散する。
その下手人はジェスだった。
「ハハッ!助かったぜニコラス!安心しろ、お前の仇は俺が獲る!“ディメンションゲート”!」
黒い筋が開く。
ジェスはその隙間に体を滑り込ませて逃げた。
アルアはニコラスが最後に放とうとした魔術から財園を守るためにジェスから目を離した。
その瞬間、ジェスはニコラスへ魔術を放ち、門を開いたのだ。
「アルア!?」
「ボクは無事!でもジェスが逃げた!」
アルアは四肢が吹き飛び、それをハンドクラフトで作り直している。
「チッ!シスターもゾシモスも邪魔ばかり……!」
財園はテレポートでシスターを追う。
その場に残ったのは手足を作り出すアルア。
「みんな自分勝手!ボクにも優しくしてよ!」
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