ep18 星降る空に人は願う

ショコレータ・ショコランティエはミスティカ・アナザーワールドが存在する限り、その人格が大衆の”神”のイメージへと変えられていく。

それを防ぐには彼の称号の原点であるミスティカ・アナザーワールドを消滅させるか、自身に称号を与えることが出来るショコレータ・ショコランティエ自身に自身の神化を否定させるか。

しかし後者は彼自身が望んだ結果であるため、おそらく誰にもできない。


「それで?私を殺してミスティカ・アナザーワールドを終わらせる……できるとでも?」


ニコラス・フラメル。

原初の魔術師であるゾシモスであり。

原初の錬金術師であるニコラス・フラメルであり。

そして新時代の魔術師アレイスター・クロウリーでもある男。

ミスティカ・アナザーワールドを作った本人であり、今現在財園和雨の前に立つ男でもある。


「やらなきゃ私の大事な人が消えるのよ?……当然納得なんてしないに決まっているでしょう!?」


「その相手は君なんてどうでもいいようだけどね?」


「恋っていうのは相手に振り向いてもらえるまで愛を投げ続ける事を言うのよ!」


――ブォン!


「そうかな?私には君は……。」


――ガッ!


「彼に嫌われているように見えるけどね?」


転移からの回し蹴りは再びニコラスへ叩きつけられる。

しかし今度はその首を吹き飛ばすことすらできなかった。


「な!?」


「そんな顔しないでくれるかな?まるで私がバケモノみたいじゃないか?」


「だったら!」


今度はニコラス自身を空中へ転移させる。


「墜ちなさい!」


――ヴァッサァ!


空中のニコラスに翼が生える。


「私は原初の魔術師“ゾシモス”でもあると言ったはずだよ?飛行機すら存在しなかった時代を生きた魔術師が“飛行”という願いを叶えていないわけがないだろう?」


「和雨さん!“フォトン・レーザー”!」


ニコラスの元へ転移しないよう叫び、アルアのビームがニコラスに殺到する。


「まずはこうして、こうして!」


”マリオネット”を利用した弾幕の形成。

ビームを収束させるように傘のように形を整えながら“ハンドクラフト”でその数を増やす。


「こう!」


その姿はまさに、光のドリルのようだった。

空を覆いつくさんと言うかの如く、光の雨がニコラス一人に対して殺到する。


「ほう、“天蓋の星”とでも表現したくなる光景だ。だがそれなら……こういうのはどうだ?」


パチンと指を鳴らすとともに、殺到していた光がいくつかの球体へとその形を変えていく。


「ビームがそんな簡単に止まるわけないじゃん!?」


「なっているのだからその結果を受け入れなさい。すぐに対抗しないと魔術師同士の戦いでは勝てんぞ?」


ビームが球状になって空へと上がっていく。

その数はどんどん増えていく。


「さぁ、はじめようか。“星辰ほしふり”。」


その言葉が聞こえた瞬間、財園だけはこの先に起きることを理解していた。


「アルア!」


一瞬でアルアの元へ転移してそのままもう一度転移する。


「逃げられるようなものを使うわけがないだろう?」


星辰の名に恥じないそれ。

雨のような光の濁流。

それが東京全土を覆いつくすように降り注ぐその瞬間。


「“今だ”。」


「“エクスチェンジ”!」


東京の上空が、真昼のように明るくなると同時にその二人は現れたのだった。

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