ep16 本堂道兼の才能

「彼、ショコレータ・ショコランティエはすでにこの世界で“魔術師”だった。そんな彼が“ミスティカ・アナザーワールド”という異世界でまた、魔術師となった。二重の意味で魔術師となった者、二重魔術師と言うわけだ!」


ニコラスは感極まって手ぶりを交えて叫んだ。


「二重魔術師……それがどうして……。」


翻って財園は思考の海にどっぷりとハマってしまった。


「どうして彼の人格が再び歪んでしまったのか、だろう?」


「……わかっているの?」


「彼は二つの称号を持った。こちらの世界では……“最強VRゲーマー”だったか?そして“ミスティカ・アナザーワールド”では【響界独神】。」


「待って、ショコレータは“最強VRゲーマー”っていう魔術師だったって事?そもそも称号って何なの?」


アルアは疑問を口にするも話を遮ったかと思い口を塞ぐ。


「魔術師は人々の願いの集合体である“魔法”を己の力で作り変えることができる。それは人々にとって“人々の願いを導くことが出来るほどの人間だ”と思われることでもある。人々はその人物に“こうあってほしい”と願うのだ。」


「願い……まさか!?」


財園は思い当たる。

いや、“願い”と言う単語を強調するような喋りによって理解させられた。


「そう、人々は願うのだ。“この人にはこうあってほしい”とな。」


「”最強VRゲーマー”には皆がいろんなゲームの頂点に狂犬のように噛みついていってほしいと願った?……でも【響界独神】は?神を名乗る相手が狂犬のようであってほしいとはだれも思わな……。」


そこまで言って財園は理解する。


「そうだ、神には人の願いを聞き届けてほしいものだ。だからああして性格が歪んでいった。そして彼は自分のことを【響界独神】と願い自身を神へと変えていった。」


「なら彼はどうすれば元に!?」


「戻らない。彼は既に自身を神と定義した。彼はこの世に新たに生まれた神となる。」


「じゃあ彼はこの先どうなる……?」


「どうにもならない。」


結論は出た。

神になった。そしてそれを彼が望んでいる。

だからもう元には戻らない。


「待ちなさい……おかしいじゃない。そう、おかしいのよ。どうして彼は“こっちの世界で”称号を得た!?」


「ほう、彼の面白さに気づいたか。」


「彼に“最強”になってほしいなんて誰も望んでないでしょう!?そんな世界で魔術師になれるわけないでしょ!?」


「そもそも”最強VRゲーマー”という称号自体がおかしいのだ。ただゲームをしていて人々がそんなものを彼に見出したと思うか?」


「……?」


「彼にはありえない才能がある。それは……“自分の強い願いによって自身に称号を付ける才能”だ。」


本堂道兼のもつ才能。

それはこの世界の全てを知った人間、ニコラス・フラメルにして“ありえない”と言われるほどの才能だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る