ep15 そうして全てを知る
「フフフ。だったら教えてもらいましょうか。あなたは私たちに、いいえ、ショコレータ・ショコランティエをどう改造した!?」
そう叫んだのは財園和雨。
ニコラス・フラメルに、これだけは聞かなければいけなかった。
自分の想い人がはたしてどのような状態になったのか。
「ショコレータ・ショコランティエ……あぁ、あの男か。」
「……和雨さん、アレ。」
アルアが指をさしたところには、ジェスが丸いオブジェを外へと運び出しているのが見えた。
「……ジェス。あとはそれだけか?」
「あぁ、これさえ運べばもうあそこにはゴミしか残ってないはずだ。」
「逃げるつもり!?」
「あぁ、逃げるつもりはないよ。ただ拠点は移さないといけなくなってしまったからね。それで、ショコレータ・ショコランティエだったか。彼は珍しいパターンのプレイヤーだったね。」
ニコラスはジェスがいつの間にかまとめていた荷物を、指を振って鞄の中に詰め込んでいく。
「4次元ポケット?」
「あぁ、そうだ。便利だろう?」
「話しなさい!話をずらさずに!」
ニコラスは面白いものを思い出すかのようにワクワクとしながら語る。
「彼に名付けるとすれば……二重魔術師とでもつけようか。」
「……二重?」
「ミスティカ・アナザーワールドはジェスと私が協力して作った“もう一つの世界”だ。そこで魔術師となったものはこちらでもその称号によって魔術師となる。」
「ねぇ、和雨さんがわかってるかもだけど、そもそも魔術師ってなんなの?」
「おお、いいね。確かに魔術師については何も教えていないものな。そこから話さねば話も解らんだろう。まず……。」
――パチン!
財園がアルアの頬を張る。
「今はとにかく彼の状態が知りたいの、邪魔しないで。」
「わ……和雨さん!ご、ごめんなさい!」
「まぁ、まて。そもそもお前たちは魔術師とはどのような存在かわかっているのかね?」
ニコラスの問いに財園が自信満々に答える。
「大衆に認められた人間、そういうものでしょう?」
「ほう、そこまでは理解しているのか。」
「あなたが魔術師を量産しようと“ミスティカ・アナザーワールド”を用意したという事がわかって、そしてさっきの話を聞いたらわかるわ。大衆が望んだものがこの世界に出現するのなら、魔術師は“魔術を使う者”として大衆が認めた人間……でしょう?」
「いいな。ちゃんと考える生徒は好感が持てる。だがそれでは片手落ちだ。」
「片手落ち?」
「そもそもその説明には“魔法や魔術”の存在が入っていない。」
「……和雨さん、魔法と魔術って違うんですか?」
こっそりアルアが財園に聞く。
それをニコラスが耳ざとく聞き取って答える。
「そう、魔法と魔術は違う。」
「……。」
ジッ、とアルアを咎める目線を送る財園。
「でも君達にはもう理解できているはずだ。すでに自由のない魔法と自由な魔術を知っているのだから。」
「なるほど。つまりボクの“フォトン・レーザー”と“フォトン・レーザーで作った剣”の違いみたいなことだよね?」
「いいねいいね、説明がはぶけるのはいい。“魔法”はプリセットのもの、“魔術”はそれを自分なりに改造したものというのは一つの特徴だね。」
「それだと、“ミスティカ・アナザーワールド”でスキルを得た時点で現実でもスキルが使えたはずじゃない?」
「“ミスティカ・アナザーワールド”は簡単に言えば異世界だ。……そうだね、“挨拶”という行動を日本では“おはよう”というね。それに対してアメリカなら“ハロー”だ。この“おはよう”と“ハロー”が魔法。でも挨拶を真に使いこなす人間は“Yah”の一言でどちらの国でも挨拶できるだろう?」
「……つまり、“ミスティカ・アナザーワールド”で得たスキルは“ハロー”だからこっちに来ても使えなくて、魔術師になったら“Yah”になるからこっちでも使える?」
「その通り!そして”Yah”を使えるようになった人間が魔術師と言うわけだ。そして魔術師となる人間は必ず“強い意志”によってその存在を世界に認知される。」
ニコラスは面白そうに言った。
「だからこそ、二重魔術師なんてものが生まれるなんて思ってなかったんだけどね。とんでもないサプライズだ!彼自体が賢者の石と同等の素晴らしい発明品だ!」
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