ep14 本堂道兼
財園グループ本社。
隔離された生活空間。
そこに居たのはショコレータ・ショコランティエと呼ばれる男だった。
「……。」
彼は何も語らない。
全ては彼の既知であり。
全ては彼の未知であるためだ。
「……。」
そんな男でさえ、自身の過去を振り返るのはやはり、一人になったときなのだ。
「……。」
ショコレータ・ショコランティエ。
本名、
彼はあまりに平凡な男だった。
「平凡。」
成績は中の中。
容姿も中の中。
人並みに恋をして、人並みに努力して。
そんな人生だった。
そんな彼に襲い掛かった“不幸”は、彼の人生に大きな歪みを与えた。
「……。」
両親の死。
本堂は一人で生きねばならなかった。
家を売り、小さなアパートを借りて生きた。
仕事を見つけ、新たな生活を始めた彼は自身に絶望した。
「……。」
彼には何もなかった。
誇りのない人間だった。
そう言えば格好もついただろうか。
彼は誰かに誇れるものが無かった。
彼は己の価値を証明したかった。
「……。」
なにも無かった。
なにも無かったのだ。
平凡な男は自分の人生を歩み始めてもなお、自己否定の感情だけが彼を貶め続けた。
「……。」
そんな男が娯楽を求めた先にあったのだ。
VRゲームという世界が。
そこで彼は“一番”を欲しがった。
全てを失ってでも“一番”が。
欲したのだ。
自らの価値を。
誰かに認められたい。
誰かに愛されたい。
誰かに崇められたい。
そう言ってもいいほどに、彼は望んだのだ。
自らの姿を。
「……。」
その思いに答えるように。
その想いに答えるように。
VRゲームは彼に力を与えてくれた。
やがて彼は“最強VRゲーマー”と呼ばれるようになり。
そして彼は今。
「……。」
【響界独神】となったのだ。
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