ep13 すべてはとうに終わっている
仮想世界。
その言葉はアルアと財園にとって予想外の角度から飛んできた言葉だった。
「……あいつ、今私達が仮想世界の人間とか言いました?」
「フフフ。面白い事ね。でもこの世界が仮想世界なんて言うのは無理があるんじゃないかしら?」
「君たち自身理解しているはずだよ?“ミスティカ・アナザーワールド”は不完全とはいえこの世界の模倣なのだから。」
「だとしても!……だとしても、そんなことを信じられるわけないでしょ!?」
「この世界の原点は人間だ。人間が“こうあってほしい”、“こうだったらいいな”という願いによって生まれたのだ。だから本当に先ほどのコインが存在したとすれば人々の願いによって必ず“裏”が出るわけだ。」
「……フフフ。妄言ね。」
「妄言ではないさ。君達だって覚えがあるはずだ。例えば“ダーウィンの進化論”。」
「猿から人間に進化したって話でしょう?」
「本当にそう思うかい?ミッシングリンク、進化の過程を示す化石などの証拠が存在しない事をそう呼ぶようになったんだろう?なぜ?」
「そんなの、見つかってないだけで……。」
――パァン!
手を叩きニコラスは視線を集める。
「見つかってない?違う。想像できないんだ。大衆は“ダーウィンの進化論”というものを信じた、だがその内容は“人間の祖先は猿”という程度の認識しかなく、その証明となるものは生まれなかったのだ。」
「どういうこと?ボク子供だからわかんないなぁ……教えて?」
アルアはニコラスには正直に聞いた方がわかりやすいとなったようだ。
その態度にニコラスは気分を良くして教えるように語る。
「そうだね。化石というものは本来存在しなかった、としたらどうかな?わかりやすくなるんじゃないかな?」
「えっ?化石がなかったら……?」
「子供の頃に一度はやらなかったかい?“あの雲は羊みたい”とか……“この石はまるで魚みたい”とかね。」
「えっ?」
「一番最初は魚に似た石を古代の魚の姿としてみた夢物語だったとしたら?」
「まさか、“この石はきっと古代の魚だ”ってのをまとめたのが“ダーウィンの進化論”?」
「だがそれが大衆に認知されたことで“化石”が生まれた。きっとあと数百年もすればミッシングリンクも埋まっただろう。ロマンを求めた大衆が“こういう化石もあったんじゃないか”という風に望むことでな。」
その言葉が真実であるとは思えない。
だが、ニコラスの顔はそれが事実であると語っている。
「フフフ……それで充分でしょう。“神秘の時代”っていうのはつまり“大衆が魔術師の存在を認知した世界”って事でしょう?」
「その通り。これでお前たちがやっていたことがわかるだろう?」
「ミスティカ・アナザーワールドを利用して配信者を魔術師に、そしてそれを全世界へ配信して注目を集め、大衆に魔術師の存在を示した。」
「本当なら君たちが魔術師になった時点で、現実世界で好き勝手魔術を使ってもらうはずだったんだがね?」
「フフフ……私が邪魔してしまったのね?」
「それも今ではちょうどいいアクセントだったと言える。なかなかに楽しませてもらったよ。」
ニコラスの笑顔は、もうすべてが解決したというようなすがすがしさすら感じる。
そして対照的に怒りで顔が歪んだ女がいた。
「フフフ。だったら教えてもらいましょうか。あなたは私たちに、いいえ、ショコレータ・ショコランティエをどう改造した!?」
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