ep10 加速する

沖縄壊滅の知らせは迎撃に出ていたRANK5プレイヤー達、魔術師達全員に伝わっていた。


「ホッカイドーからオキナワまで行く必要はナイデスねー!バターカオルサーモンステーキデスネー!」


コジロウは旅行を楽しんでいる。


「Zzz……。」


ベヘリは酔いつぶれて眠っている。


「ま、仕事しろってんならまた連絡して来るでしょ。」


シェリアは和歌山で酔いつぶれている4人のもとへなんとなく移動を始めていた。


「山口壊滅の補填に行ってくるか……。」


バンデットは沖縄を目指すことにした。

が、しかし。


「もしかして沖縄に行く手段……ないんじゃね?」


そう、飛行機無しで沖縄に行くには財園和雨の“テレポート”が必要になる。

しかしそうなれば自分の失態がバレてしまう。

沖縄で手柄を稼いでからバレなければならない。

つまり。


「……だれか沖縄まで移動できる奴が居ねーか?」


とりあえずペンツァーに聞いてみる。

すると直ぐに“私が抱えてあげるよ!”と返答がきて安堵する。


「おぅ……よかった。……“抱えて”?」


その疑問と同時、空から女が降ってくる。


「マイ!マイン!マイ!ダァァァァァァァァァァリィィィィン!」


変態だった。

現実世界だから普通の服を着ているはずのその女はゲーム内と同様の陸上選手のような姿をしていた。

半裸に近い薄着で空を走り、叫びながら両手を広げ襲い掛かる姿はまさしく変態のそれだった。


「ペンツァー!?なんでこんなに早くここに!?」


「ダーリィィィィィィィン!会いに来たよぉぉぉぉぉ?」


二人の間に言葉はもう必要なかった。

前後逆に肩車のような体勢となり前が見えないバンデット。

彼の頭部を己の体に押し付けながら奇声を上げるペンツァー。

ガクガクと体を震わせながら太ももを叩き、離れるのを懇願するバンデット。


「アッハッハ!ダーリン!ダーリンダーリン!」


――バタァン!


思いっきり地面に倒れるバンデット。

その衝撃で拘束を抜け出したバンデットが叫ぶように吠える。


「バカ!ここまで走ってきたお前の股が汗臭いんだよ!しかもわざわざ押さえつけやがって!息が止まるわ!」


ムワッと白い煙を顔から一瞬立ち昇らせたバンデットをペンツァーが問答無用で抱えて跳ぶ。


「沖縄でしょ!さっさと行って明日は最高のデート!でしょ!?」


――ダァン!


空中を蹴って加速する。

お姫様抱っこの状態でまだ叫ぶバンデット。


――ブフッ!


唇から変な音がするくらい強くキスを落とすペンツァー。


「舌噛んじゃうでしょ?」


「あ、あぁ。」


「だからもう喋らないようにキスしながら向かうね!」


「はぁ?」


――ブフッ!


――ダァン!


――ダァン!ダァン!


夜明けに向けて彼らは加速する。


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