ep7 北と南の圧勝

北海道北部。

コジロウは遊んでいた。

それもそのはず。“草薙剣”が意味不明な挙動をしてしまったからだった。


「オーゥ……やっぱり……カニデスネー!」


草薙剣は“野火の難”をしりぞけた逸話から、火を払う効果があったのだ。

そしてそれは“戦火を払う”という形に歪曲された効果を発揮してしまったのだ。


「ソシテソシテェー?」


「……。」


周囲には両腕を失った兵士たちの姿が残っていた。

コジロウが草薙剣を一振りした瞬間に両断されたまま放置されていたのだった。


「やっぱり……ウニもサイコーですねぇ!」


戦争を起こそうとした相手を“戦火”と捉え、その火をつける手を“燃え盛る藪”として切り落とす。

スキルとして、おかしい。

いや、そもそも他のスキルと比べていいものじゃない。

まるで“草薙剣”というものにこじつければ何でもできるかのようなスキル。魔術。


「いやぁ……イクラもイイですねー!」


だがしかし、この男はきっとそんなことも気にせず“使えるものは使う”スタンスで行くのだろう。


一方その頃、沖縄。

ミスティカ・アナザーワールドのプレイヤーでもRANK5到達が遅かったものたちは沖縄に集められていたのだった。


「財園グループ……とうとう終わりかもな。」


「ワンチャン俺達もアメリカに亡命したらスターになれるんじゃね?」


「ふぇ?俺達ってあいつらより弱いのが世界中にバレてんだぜ?無理っしょ?」


「でもよぉ、外の魔術師が俺達より強いわけじゃないっしょ?つーまーりー、俺達だって外に出ればエースよエース!」


「エースかぁ……いいなぁそれ!」


「そしたら俺達だってもっといい生活できるぜ?」


「財園グループにいてもちょっと物足りねぇんだよなぁ?」


「だったらよぉ……あの目の前の軍艦全部ぶっ潰したらよぉ……!」


「アメリカ代表だなぁ!?」


「「「「フォオオオオオオオオオオオオオオ!」」」」


「やっべぇぜ!?ベガスで豪遊できるぞ!?」


「女も酒も好きなだけ飲めるぞ!?」


「おいおい……俺のものだぜ?じゃますんなよ?」


そう、あと少し接敵が遅ければ、仲間割れで全滅という結果になっていてもおかしくなかっただろう。


――ゴゥ!


突風が吹く。

その音は一瞬、彼等の耳を奪い、足を止めた。


「アンドレ・メッセンジーだ。そう。」


――ブォン!


剣を一振りしたアンドレはその、更地になった沖縄で一人、呟いた。


「俺が、俺こそが“勇者”さまだ。」


――沖縄、壊滅。

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