ep5 愛知に橋を架けろ

三重県、八代神社。

愛知県沖に浮かぶ小島にあるその神社にシェリアは居た。


「むーかーつくー!」


愛知県の工業地帯へと侵攻を狙うイタリアを抑えるためにこの小さな島に放置されたシェリアは暇だった。


――ピロン!


――ピロン!


――ピロン!


――ピロン!


何度もメッセージが送られてくる。

その通知は先ほどから何度も何度も送られてくる画像のものだった。


「なんでベヘリは楽しそうに飲み会してんのよ……!」


その画像にはフランス人らしい3人の姿があった。

店を小まめに変えているのか、毎回画像が変わる。


「あいつ、仕事終わったら私の手伝いに来て“お疲れさまでした、あとは任せて休んでくださいシェリア様”くらい言うもんでしょ!?」


――ピロン!


――ピロン!


「あ゛―!」


ガラガラ声で叫ぶ。


「やぁレディ。そんな男放っておいてボクと遊ばないかい?」


イタリア人の男がいた。

仕立ての良いスーツに身を包み、流暢な日本語で話す彼はシェリアにそう言って声をかけたのだった。


「あっ!イタリア人ってことは敵!?」


シェリアは慌てて“トランセンデンス”を発動させるも男も慌てて叫んだ。


「ストッ!ストップ!ストーップ!」


男は手でそれを制し、口を開く。


「ボク、魔術師、ちがう。オーケイ?」


「えっ?魔術師じゃないのに来たの?なんで?」


「Ah……ボク、オトス、オンナ、カエル、オーケイ?」


「いやなんでよ!?」


「ボクに毎日みそ汁を作ってほしい、君の瞳に痺れるような興奮を感じたんだ。これは運命だ。」


男の再び流暢な日本語を聞いてシェリアはその違和感に眉をひそめた。


「あー、もしかしてだけど……ナンパする為の日本語を覚えてきたけどそれ以外はまだ覚えられてないってこと?」


「イエス、イエス、イエス……これは運命だ。ボクは地上の女神に出会ったようだ。結婚してほしい。」


「イタリアはアンタしか出してこなかったわけ?」


「ノー、フネ、魔術師、数人、いる。」


「……いいわ。デートくらいはしてあげる。“チェインクラッチ”!」


鎖が現れ男の体を縛り上げる。


「ワッ!」


「えー……強引な女は嫌い?ベヘリならこんな鎖直ぐ抜け出しちゃうのに?」


「ハナセ!ハナセ!アッ!」


グッ、と力を込めて持ち上げる。


「それじゃあ海の上までエスコートしてねー!」


――ブォン!ブォン!ブォン!


鎖で縛られた男を振り回して遠くに見える船を狙って放り投げる。


「オォォォォォォォゥ!」


――ジャラララララララララ!


鎖がどんどん伸びていく。

そしてそれは船への一本の道となる。


「バランス感覚ヤバくね?わたしさいきょーかよ?」


――ダダダダダダダダダダダ!


鎖の上を疾走していく。

“トランセンデンス”の身体能力強化はその名の通り超越者へとその身を進化させる。

他の身体強化が格闘技のチャンピオンのようなものだとしたらこれはスーパーマンだ。

まさに次元が違う身体能力。


「それじゃ、死んじゃって!」


跳躍からの踵落とし。

ただその一撃で軍艦一隻が叩き折られたのだった。

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