ep4 和歌山酒豪戦

旧和歌山北港魚つり公園。

資材置き場となっているその場所は大きく開けており、いざ侵攻しようと考えるものにとってはちょうどいい拠点となりそうな場所だった。


「こんなところに来てよかったのかね?」


「日本王国が鎖国したとはいえこんなリンチみたいな事するのはどうかと思うが?」


「だよねー!それよりさー、スシとテンプラ食べに行こうよー!」


「ウチの国の方がうまいものを喰えるだろうが、馬鹿。」


3人の影。

神経質そうな男と筋肉の盛り上がった男。そしてヒラヒラとしたドレスに身を包んだ女がいた。

フランスからやってきた彼らは正直日本に侵攻するつもりはなかった。

ただ魔術師として優秀だから選ばれただけで、国が金を握らせてきたから来ただけの観光客のようだった。


「でもさー、美食の国って言われてるウチの国だっておいしくないのはあるじゃん?やっぱり海外旅行の醍醐味と言ったらご飯だよご飯!」


「はー、俺達こんな事してていいのかねぇ……。」


「俺達3人で何をしろっていうのか。そもそも本気で侵攻する気なら軍艦でも持ってきて頭数増やすと思うが?」


「ねー!はやくご飯行こうよー!ごーはーんー!」


――ヒュルルルルルルル……


――バァン!


花火が上がる。

立った一発のそれは夜空に小さな花を開く。


「よし、俺達はこれで仕事したな!飯だ飯!」


神経質そうな男はそう言うと二人へ振り返った。

そして“それ”に気づくのだった。


「はぁ。すまんが仕事なんで。」


二人の首元にナイフを突きつけているサラリーマンのような男。

ベヘリだった。


「こうさーん!こうさんでーす!いのちだけはおたすけー!」


ドレスの女はそう言って両手をあげる。


「まけなんでー、おいしいご飯の出るお店に案内してほしいでーす!」


「……本気で言っているのか?」


ベヘリはドレスの女から普段一緒に行動している女と同じものを感じる。


「本気なんだよ、旦那は迎撃に来たんだろ?俺達も仕事しましたってことで花火をあげたら仕事終わりなんだよ。……そっちの筋肉もそれでいいはずだが?いいだろ?」


「あぁ!それにちょうどいい案内人も出てきたしな!いい飯を食わせてくれ!」


ベヘリは3人の態度に、面倒くさくなって居酒屋へと案内することにした。


「えー!居酒屋ってBARみたいなところでしょ?せっかくドレス着てきたのにー!」


「よくみろ、ドレスコードがある店に入れるのはお前だけだ。」


「ぶー!」


「……俺の所は楽でよかったな。」


「あ、でもいいワインを出すところにしてくれよ?フランス人はいいワインさえあれば満足するんだ。ハハハ!」


「えー!せっかく日本に来たんだからしょーちゅーが飲みたーい!うちのそばだとたっかいんだもん!」


「じゃあそれもだな。あとそこの神経質そうな男はヴィーガンらしい。肉はダメだから店を選んでほしい。」


「……一番きつい所だったか。」


4人は夜の街へと消えていった。

翌朝、4人で仲良くゲロを撒き散らしながら戻ってくるまで彼らは終始愉しそうにしていたことだけは間違いない。

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