ep2 神秘の狂騒
財園グループ本社魔術師隔離施設内。
そこには二つの影があった。
「フフフ。まさか先進国が徒党を組んで仕掛けてくるなんてね。」
そう言って財園は男の顎を撫でる。
うしろからあすなろ抱きで自身の胸を押し当てながら、彼の肌へその手を伸ばす。
「……。」
それを拒絶するでもなく、ただ撫でられ続ける男。
「でも彼等も馬鹿ね。どこにどの国の魔術師が来るか、丸見えなんだもの。」
部屋の壁に映し出された映像は日本を宇宙から見下ろすように監視する映像。
過去、日本と言う国が打ち上げていた人工衛星からの映像だった。
「……。」
「フフフ。米国が沖縄、イギリスが山口、ドイツが長崎、フランスが和歌山、イタリアが愛知、カナダは石川、ロシアが北海道、中国が東京へ進撃するようね。」
そして財園はまた、プロジェクターの電源を入れてそのリストを表示させる。
「そしてこれがこちらの戦力。さて、誰をどう配置しようかしら?」
「……。」
「まずアルアには東京を任せましょうか。そしてペンツァーは長崎で、バンデットを山口へ。終わったらデートでもさせてあげましょう。」
「……。」
「んーコジロウは北海道に行ってもらおうかしら。ベヘリとシェリアは和歌山と愛知かしら?」
「沖縄と石川はどうする?」
ここまで沈黙していた彼が口を開く。
その声はまるでエコーマイクのようにしばらく周囲の空間に響く。
しかしそれは決して不快でなく、聴くもの全てに安寧を与えるものだった。
「沖縄には最近頭角を現してきた子たちを、石川は私が出るわ。」
「……。」
もう喋るつもりは無いと言いたげな様子で男は椅子に座り直す。
「それにしても、今の姿を晒したら世界中であなたのことが話題になりそうね?」
「……。」
「フフフ。わかってる。誰にも見せないわ、こんな姿を人に見せたらあなたを一人占めできないもの。」
「……。」
「それじゃ、私は行くわ。お留守番、よろしくね?」
――シュン!
部屋の中から財園が消える。
残されたのはたった一人の男。
「“さて、それじゃあ俺はここで皆の無事でも祈ろうか。”」
彼の髪は暗い部屋に居ながらも星空のようにきらめいていた。
その肌は白く、陶磁器を思わせるようなきめの細かい綺麗な肌をしていた。
その目は黒く、瞳のない黒塗りの何かが嵌まっているだけだった。
そしてその声はだれよりも美しく、どんな音楽よりも心地よく。
その男はかつてショコレータ・ショコランティエと呼ばれていた。
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