Chocolate Candy

ep29 銀翼槍

繰り返される翼の槍による攻撃を躱しながら“ストンプ”と“バレットパレット”で攻撃は忘れない。

「あぁ！キッツ！」

ショコレータは逃げ回りながらも攻撃を続ける自分の動きに限界が近いことを察していた。

「これはどうだ？」

そんな内心を知ってか知らずか、ゲンデイールが新たな攻撃を行う。

「イッ！？」

ゲンデイールが大きく振るった銀翼槍。

それから飛び散って水滴となった銀。

「グッ！？」

体に触れたその水滴の一つ一つが釘のように形を変え、ショコレータの体を貫いていく。

「そら！もう一度だ！」

POWERによる自動回復は出血を止め、痛みを消す効果はあっても体内の異物を取り除くことはできない。

「クソッ……！」

これを繰り返されては勝ち目がない。

「これはちょっと発破かけすぎたかね……！」

「まぁ、インセールまで調べたのはすごいとは思うが……せめて称号持ちになっていなければな。あまりに力の差がありすぎる。」

「はぁ？俺も称号持ちなんだけど！？」

「……それでこの程度か。」

「あぁあぁあぁあぁ！そこまで言われるなら教えてやるよ！【響界独神】ショコレータ・ショコランティエ！それが俺の名だ！」

「くだらんな……称号を持っていたところでなんだ？その程度の実力で称号を持つことを恥じねばなるまい？」

「あぁそうだな！」

言いながら、銀の雨を回避し続けるショコレータ。

「どうやって躱せば……。」

どうやらゲンデイールも銀翼槍を振り回すたびにその銀を撒き散らすようにしている。

それは着実にショコレータのPOWERを削っていく。

「ハッハッハ！俺の“銀纏幻界”の前に、ただ回避し続けるのは悪手でしかないということがわかったか？」

「クソッ！インセールとそこまで強さも変わらないと思ってたのが間違いだった！」

その一言に、ゲンデイールは勘違いしていたことに気づく。

「インセールと戦ったのか！？彼女はどこにいる！？」

「あぁ？だから言ったろ？おれが殺したってなぁ！」

「貴様は天族の街でインセールを殺したのではないのか！？」

同様と共に、銀翼翼の振りが大振りになった。

（そうか、あれだけの銀を操作するなんてそりゃあ集中力がいるよな？……なら！）

「インセールは生きてたんだよなぁ！天族の街から翼を切り落とされて人間の街へ落下したけどな！」

「な！？落下したなら死んでいたはずだろう！？」

「そのインセールの体に寄生虫を植え付けて動けるようにした人間が居たんだよなぁ！そんでそいつを回復させたら寄生虫も自力で取り除いて完全復活だ！ついこの間の事だぜ！？」

「おぞましい……そんなことを！？」

銀翼がもう槍と呼べない程に乱れている。

「そんでもって復活したインセールを殺したのがこの俺だ！悪いな！」

「貴様ぁ！」

「ゲンデイール！ゲンデイール！って泣き叫ぶからさぁ！お前を復活させてやったんだよ！」

「貴様だけは殺してやる！お前だけはぁ！」

――チャリ。

「これ、なーんだ？」

それはいばらを模した指輪。

ゲンデイールの銀によって覆われた、いばらの指輪。

「それは！？貴様ぁ！殺してやる、お前は手ずから殺してやる！」

銀がゲンデイールを覆っていく。

その体を覆いつくすそれは巨大な悪魔のようだった。

「ガアァァァ！アアァァァァ！」

「ハハッ！ま、そのほうがおれはやりやすいかも……な！」