ep26 POWERが違う
――ドォン!ドォン!ドォン!
繰り返し破砕音が鳴り響く戦場。
「ドーン!ドーン!ドーン!ってな!次は頭だぜぇ!?」
“バレットパレット”による炸裂弾の衝撃は実際のダメージよりも大きな音と破砕によって恐怖をあおる。
「ミスティ!ダスティを!」
ヴィクトリカが前に立ち、ミスティにダスティを守らせる。
「ダスティお姉さま!だからいつも言っていたんです!“ヴィクトリカ姉さまとミスティが強いし私は鍛えなくていいや。”なんて言わず、お姉さまも鍛えてくださいって!」
「だってぇ……私頑張っても右手しか“白纏紡身”できませんし!」
「せめて両足はできるようになっててくれたらこんなことにならなかったのに!」
3女のミスティが次女のダスティを小脇に抱え逃げ回る。
その姿を見ながらショコレータは不敵に笑う。
「あー、ハハッ。なるほど“シスターズリンク”ってパッシブスキル……Pスキルなんてプレイヤーでも見た事ねぇのに、まぁ魔族っていうだけあるなやっぱ。」
“シスターズリンク”という単語が出たことでヴィクトリカの顔に影が差す。
「バレたと思って焦ったな?おかげでもうお前らのスキルは丸裸だ!」
「そこまで言うなら言ってみなさい!」
「焦るねぇ……だがその焦りが、恐怖がお前の思考の霧を晴らすんだぜ!お前ら3姉妹は“シスターズリンク”によって常にダメージを分散共有しているんだろう!?」
「……!?」
バレた。
その表情はそれを如実に表していた。
「だからお前らは受けたダメージを3分の1ずつに分けて、3人がそれぞれ自分の自動回復でそれを治す!POWER上限の上昇と自動回復の3倍速化に近い状態になれるわけだ!」
30のダメージを3人で分ければ1人10。
それぞれが減った分のPOWERを回復する以上、そのPOWER周りの性能はRANK4の枠に収まらないものになっている。
「確かにRANKの差がある相手には勝てないが、RANKを超越した強さを得ることができる強いスキルだがなぁ!それだけなら俺には勝てねぇ!だから“ドレインリンク”を使った!」
もうすでに、恐怖で震える思考からそのスキルの効果を知っていた。
「俺から常にPOWERを吸い上げるスキル!俺の回復を遅くしたうえで自分たちの回復を加速すれば充分戦える!……わけねぇだろぅ!?」
実際、現在の回復速度は拮抗している。
しかし。
「リンクが切れないように全員が一定距離内に居ないといけない!【もしも私が】!」
そう叫んで大きくジャンプするために魔族の強靭な足腰を出現させる。
膝を曲げ、今にも跳ぼうと準備をした。
「まずっ!ミスティ!」
ミスティはダスティを床に下ろし、強化された両足でショコレータの跳躍を止めようと肉薄する。
「イラッシャイマセェェェェェェ!」
それをショコレータは両腕による抱擁で迎え撃つ。
――バキバキバキ!
地面が割れ、密着したミスティとショコレータが空中へ跳ぶ。
――ドォォン!
空中でミスティを逆さに持ち替え、首から地面に叩き付ける。
「パイルドライバー!ってな。さて、これで“ドレインリンク”は消えたし、ミスティの気絶でお前らの回復も遅くなったな?」
「あ……あぁ……!」
「“バレットパレット”。まぁ、前座としてはなかなか面白かったぜ?」
――ダァン!ダァン!
2発の弾丸が勝敗を決定づける。
それと同時、アルアがそばに寄ってくる。
「これでボクはサブクエスト完了だけど?まだ何かする?」
「あぁ、俺はちょっと必要なものがあるんでな。」
「最後まで付き合う?」
「いや、あとはゲンデイールと一騎討ちだろうからいいよ。おつかれ。」
「ふへぇ……もうクタクタ。またねー。」
アルアがログアウトする中、ショコレータはメンデール家で一際目を引く“それ”を手に取った。
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