ep23 クラウディオ・メンデール

男とアルアは互いに一度距離を取り、互いに言葉を交わしていた。


「少女よ。貴様の名を聞いておこう。」


「はぁ?ボクの名前が今必要だっていうの?」


「ならば貴様の墓には“愚か者”と刻まねばならんな。」


男は口元を歪ませ、侮る視線をアルアへ向ける。


「ならボクの名前は要らないでしょ。」


「なに?」


アルアは自分の方が上手だと言うように笑う。


「だって君よりボクのほうが、強いもん!“マリオネット”!」


アルアの体が宙に舞う。

重さを感じさせないその姿。

作り物の翼でバランスを取りながら、自身の四肢を切り離す。


「……少女だと言うのに……四肢を失うほどの争いを経験しているのか……!?」


――バス!


男が漏らしたその言葉に、アルアが容赦なく“フォトン・レーザー”を撃ち込む。


「酷いね。これだから自分の物差しでしか考えない雑魚は嫌なんだ。“ハンドクラフト”。」


アルアの周囲に複数の人形腕が出現し、その掌を男へ向ける。


「……これほどの数……!」


「死んじゃって。」


――バスバスバスバスバスバス!


一斉に光が男を襲う。


「“白纏紡身”!」


白い糸が体を覆う。

男の体を覆いつくしたそれが翼や巨大な爪の姿へと変わっていき、光を防ぐ。


「我は“武”を司る4大公爵家!メンデール家の家長だぞ!」


「それが?うっとうしい……なぁ!」


大量の人形腕がイワシの群れのように一つの流れを作り男に襲い掛かる。


「“フォトン・レーザー”!」


その人形腕の一本一本が光の剣を生やして男を襲う。


「我が名は“クラウディオ・メンデール”!答えはとうに決めている!」


「まさか!?」


慌ててアルアが腕を手元に引き寄せ自然落下させる。


「【白纏罪血はくてんざいけつ】クラウディオ・メンデール!」


アルアはマリオネットも解除して地上で落とした人形腕の影へと避難する。


「これが、称号の力!滾る、滾るぞ!これで力が!力が!“白纏紡身”!」


クラウディオの体がどんどん白い糸に覆われていく。

否、これは覆っているのではない。


「巨大化……!」


3メートルを超える巨体となったクラウディオ。


「あの糸でかさまししているだけだろうけど……!」


――ダァン!


轟音。

しかしその音がアルアの耳へ届いたときにはもう遅いのだ。


「ぐっ!?」


――ドッ!ザッ!ザザザザザァァァァァァ……。


アルアの体が宙に浮きあがり、地面に一度バウンドして地面にその体を擦りながら滑っていく。


「軽いなぁ。思っていたよりもよく滑る。」


「かさましなんかじゃない……全身が筋肉かよ……。」


「筋肉すら、その正体は繊維質の肉でしかないのだ。ならば全身をより強い繊維で包んでしまえば当然こうもなるだろう。」


白い糸でできた鎧。

いいや、クラウディオが腕を曲げ伸ばしして見せれば筋肉と同様に膨れ、力こぶが出来上がる。


「ハッハッハ!今なら名乗りを上げる権利をやるぞ?墓石に“愚か者”と書かれたくなければだがな!」


「くっ……これが【EXPERT LOOT】のボスの力……。」

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