ep22 メンデール3姉妹
――カチャ、カチャ……。
一家団欒と言うにはあまりにも言葉のない食卓。
テーブルマナーを守って食べる男の前には二人の少女が苦戦しながらステーキを切り分けていた。
「ふにー!……もうだめ、お父さん切って!」
「やれやれ……ヴィクトリカを見習いなさい。メンデール家の淑女としてもうテーブルマナーをきちんと修めているのだから。」
「いやですわ、お父様。ダスティの歳の頃は私もまだ音を立てずにステーキを切り分けられませんでしたもの。」
お父様と呼ばれた男は少し困ったような顔で口元を綻ばせる。
「そうは言ってもねぇ……メンデール家の淑女であることには変わらないのだから早くダスティにも淑女としての気構えというものを……。」
――ダァァァァァァァン!
言葉を遮るかのように、轟音が響いた。
「なんだ!?」
「お、お父様!これは一体!?」
「とにかく音の方へ向かうぞ!二人ともついてきなさい!」
そう言って3人が扉を開け、階段へと差し掛かったところでそれは現れたのだった。
「お父様……ごめんなさい。私が、私が弱いから……。」
わき腹からダクダクと血を流しながらそう言ったのはミスティ・メンデール。
この家の3女であり、もっとも自己研鑽を積んだ女だった。
「感動のご対面ってやつだな?」
そんなミスティを猫でも捕まえるかのように首元を掴んで持ち上げた男。
黒いキャソックに身を包み、温和な笑みを浮かべた男。
ショコレータ・ショコランティエだった。
「貴様……此処がどこだかわかっているのか!?メンデール家だぞ!4大公爵家の“武”を司るメンデール家だぞ!」
「知らねぇなぁ、【銀纏星将】の栄華を奪い取った盗賊の家だろ?ここはよぉ!」
そう言ってミスティを壁際に投げ出すと、その瞬間、男がショコレータへと肉薄する。
――ガキィン!
「“ハンドクラフト”。悪いけどさぁ、アンタが出てきた瞬間ボクのサブクエが【EXPERT LOOT】になっちゃったんだよね。」
アルアの手には人形の腕が絡まったようなメイスが現れていた。
その不気味な見た目に反して、強度は確実に高かった。
男の持つ刀と打ち合ったにもかかわらず、その組み合った腕はほどけず、砕けず、その存在感と言う名のプレッシャーを嫌と言うほど見せつけていた。
「お父さん!」
「お父様!」
「「“白纏紡身”!」」
二人の体に白い糸が絡みついていく。
ヴィクトリカの両腕が白く染まり、ダスティの右手も同様に白く染まる。
「……おいおい、普通3女が一番弱いんじゃないのかよ?どっちも半端じゃねぇか!」
「ミスティ姉さまがやられたって言っても……二人がかりで勝てない通りはありません!」
ダスティが気丈に叫ぶも、その白く染まった右手は震えている。
「ダスティ。目の前の男は間違いなく強者ですわ。でも、あの腕女と二人がかりで倒されただけでしょう。私たち二人で、あの男一人を相手にするなら十分勝機はありますわ。」
ヴィクトリカは両腕の白い爪をショコレータへ向けて言い切った。
己を鼓舞するように。
可愛い妹を鼓舞するように。
「ヴィクトリカ姉さま……。」
「えぇ、ダスティ。」
「「行きますわ!」」
二人の姿を目に焼き付けるように見つめるショコレータは口を開く。
「姉妹仲はいいらしいなぁ?だがなぁ……。」
その目は二人の心境を映しとっていた。
「その裏側の“恐怖”を隠せてねぇなぁ!」
【SUB STORY QUEST】
【絶望抱く高潔の称号】
【EVENT BOSS BATTLE】
【禁断の愛を纏う者たち】
【メンデール3姉妹】
【BATTLE START】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます