ep13 願う変化はただ一つ

「あ“-!」


財園に抱っこされながら部屋に戻る。

ボスッと音を立ててベッドに倒れ込むと財園がペリペリとスーツをはがしていく。


「はーい、おしめの時間ですよー!……フフフ。」


「ん。」


仰向けになり、されるがままおしめを変えてもらう。

慣れたものだ。


「いや、慣れちゃいけないんだけどな?」


「フフフ。これから顔を合わせるたびにキスしてくれるならこのスーツを脱いでもいいわ。どう?」


「んー……。」


キスか、おしめか。


「普通私みたいな世界一の美人とキスできる権利なんて手に入らないのよ?」


「だがなぁ……。」


キスまでしたらもう既成事実感を感じるというか……。


「まぁ、いいけどね?……フフフ、もう諦めて私のものになればいいのに。」


「それより、頼んでた件はどうだった?」


財園に添い寝一回で依頼した件。

現実世界での”サイコメトリー”使用時に起きる精神汚染のような現象。


「一応調べてはみたのよ?ほら、見える?」


ペリペリと剥がしたスーツの内側に貼られた変な形のシール。

これが財園グループ全力の最新設備による解析の道具。


「このシールはこれでも解析用の最新技術の塊なのよ?でもこれは……。」


ベリ、と剥がしてみせる。


――ポタッ


「中の機械が全部溶けちゃってる。熱は無かったのでしょう?」


「あぁ、一応気を付けて見たんだがそんなことになるのか……?」


「ありえないわよ。こんな事。でもこうして実物を見て確信したわ、あなたの体には何かが起きてる。私も試してみたけど、”テレポート”なんかじゃこんなことにはならなかったわ。」


「つまり、俺が”サイコメトリー”を使うと溶けると……ストンプじゃ溶けないのになぁ……。」


「とにかく、人体への影響はわからなくても、いい方向の変化じゃないと思うから。何か起きたと思ったらすぐ知らせるのよ?」


「お、おう。」


とにかく、今はゲームを進めるしかない。

魔術師として認知されている以上、常に強さを求めなければ時代に置いていかれるかもしれない。

もっと強い魔術師が生まれたらどうなる?

それが財園の支配を嫌うようならどうする?

財園のような超人だからこそ、今の日本王国は何とか国としての体裁を保っていられる。


「結局強くあり続けるしかないんだな。」


平和な生活なんてものを求めてはいけないのだろうか。

いや、そもそも平和なんてものはどこにある?

どうすれば平和な世界は存在し得る?

誰かが上に立たなければ。

誰かが世界を支配しなければ。

超越した存在が居なければ。

平和はやってこない。

この世界に響きわたるような。

孤独な支配者が。

神が。

存在すればいいのに。


「……なんだろうな。」


変なことを考えている気がする。

”ミスティカ・アナザーワールド”をしなければ。

今はとにかく強くならねば。


「……ゲームしよ。」


難しい事は考えたくない。


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