ep5 ペンツァーデート
バンデットとペンツァーは一番に街へ繰り出したのだが、少々困ったことになっていた。
「金が……ねぇ!?」
「いやぁ……物価がここまで違うと流石にどうしようもないねぇ……。」
目の前の光景に圧倒されていた。
あまりに物価が高すぎる。
「あっ!これ見てダーリン!」
そう言ってペンツァーが指をさしたのは一枚の張り紙だった。
【タッグバトルトーナメント イン デビルグレイブ】
毎年恒例のバトルトーナメント!
今年はなんとタッグ!タッグですよ!
この初の試みが行われる会場は~!
首都デビルグレイブで行われます!
初のタッグトーナメントに相応しい首都開催!
そして……優勝賞金も当然いつもの2倍!
2000万C!
さぁ、我が力に自信のあるものは来たれい!
知を使え!
力を使え!
そして何より!
覚悟を決めて挑んで来い!
「はぁ……闘技会か。このデビルグレイブってのが首都か?」
「みたいだね。……へぇ……“グレイブ”ねぇ……。」
「一人当たり賞金が1000万Cか、これだけあれば確かにこの街でも好き勝手出来そうだな?」
しかし首都に行くにはかなりの距離を移動しなければいけないようだ。
「あー、これさぁ……アイツらも誘うか?」
「ダーリンは優勝する自信ない?それならまぁいいけど、優勝する自信があるなら誘わなくていいと思うよ?」
「まぁ、賞金が出るのも優勝者だけだしな。」
「……よし。」
「ん?何が“よし”なんだ?」
「ほら、これから何日か一緒に探索しようって話だったでしょ?でもこれに私たちが参加するなら一緒に探索なんてできないでしょ?」
そう言ってペンツァーはメッセージウィンドウを見せる。
そこには“タッグバトルトーナメントに参加するのでダーリンと首都に向かいます。探索は不参加でお願いします!”と書かれていた。
「あー、そういうこと。」
「これでダーリンとしばらくの間一緒だね!」
「……あぁ、そうだな。」
「そう、しばらくは二人っきりだね!」
「……あぁ、そうだな。」
「そう!しばらくの間!二人っきり!二人っきりだよね!」
ペンツァーは薄着の自分を顧みず、バンデットの腕を取り歩き出すが、その表情は不服そうだ。
「二人っきりだな。」
「そう!二人っきりなの!」
「じゃあ手を繋いでもいいだろう。」
「……普段はチャラ夫っぽい陰キャなのにこういう時だけは可愛いよね?」
「俺は目立ちたいだけで、そういうのを求めてないからな。」
ペンツァーがその手を恋人繋ぎに握り直す。
「ならもっと見せつけちゃえばいいのに!」
「いや、それは……いい。」
「ねぇー、付き合って結構経ったのにそんなに緊張する?」
「……付き合ってたのか。」
その呟きを耳ざとく聞いたペンツァーが叫ぶ。
「遊びだと思ってたの!?」
「いや……こう、そういう話をしなかったし……。」
「うわぁ……陰キャすぎない?」
その言葉に傷ついたバンデットは強く彼女を抱き寄せる。
恋人繋ぎのその手を寄せ、互いの体温を感じられる距離まで寄せる。
「いくぞ。首都までは長いんだ……急がずとも、ゆっくり歩いていけばいいだろ?」
「たくさん繋がっていたいって、そう言えばいいのに!」
「……ダメか?」
「可愛いなぁ……ダーリン。」
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