ep3 デビル・フロント
――ザッパァァァン!
海へと到達したホバークラストは陸上とは打って変わって静かになった。
「フフフ。さて、それじゃあそろそろ話しましょうか。」
そう言って話し始めたのはキャンディナだった。
「それで?キャンディナはどうやって魔族の国“デビル・フロント”を見つけた?」
ショコレータの質問に、キャンディナは楽しそうに語った。
「まず、“神秘の欠片”はこの世界における争いの種だってことは知っているでしょう?」
「あー、そういえばそんな説明だったよな?でもそもそも“神秘の欠片”を街の外で狩りしてた俺が知らないんだから自然界にあるもんでもないんだろ?」
「バンデットからすればそうだろうな、だが忘れてないか?俺達の目の前にいるのは財園和雨だ。現実世界じゃ元々最強レベルの資産家だぜ?」
「フフフ……流石にあなたにはバレてしまうのね。そう、私は“神秘の欠片”を買い取った。」
「RMT(リアルマネートレード)じゃねぇか!ゲームによっちゃあBAN対象だぞ!?」
「フフフ。それこそゾシモスの目的を知らなきゃできないでしょうね。でも私は第一回イベントで配られた“神秘の欠片”をそうやって集めた。」
彼女の物言いに、彼女をよく知るバンデット以外の全員が呆れたような顔をする。
「……それで?ゾシモスの事はもうどうでもいい。“神秘の欠片”を集めて何がどうなったんだよ?」
「フフフ。そうして集めた“神秘の欠片”を地面に設置してしばらく、やってきたのは魔族と天族だったわ。」
「なぁ、キャンディナは天族と魔族を見たってことだよな?見た目とかって分かったのか?」
「天族は翼に巻き角、魔族は尻尾に肥大化した足腰を持っているみたいだったわ。……フフフ、あなたはもう知っていたかもしれないけれど、ね?」
【罪人】インセール。サブクエスト【下水の姫と小さな翼】のボスはやはり【もしも私が】を使用した天族だったようだ。
「で?俺はそんなんどうでもいいんだよ。リーダーには悪いけどよ。それで天族と魔族は“神秘の欠片”を奪い合ったのか?」
「フフフ。まぁ、奪い合うように争いながらそれを持って帰ろうとした彼らを私は暴力で跪かせたわ。」
「流石和雨さんだ!」
周りがドン引きする中、アルアだけがキラキラとした目で見つめていた。
「フフフ。キャンディ食べる?」
「わーい!」
両腕と両足の操作を切り、脱力した彼女の口にキャンディを放り投げるキャンディナは続けた。
「それで彼らの拠点の場所を聞いたのよ。そして天族の方は難しいけど、魔族の方は何とかなりそうだったからこうして来たってわけ。」
「……それで、目的の場所はどこに?」
シスターは話が長いと言わんばかりの態度でそう言った。
「フフフ。せっかちな女は嫌われるわよ?シスター。」
キャンディナの視線がショコレータへと向けられる。
フィ、と目を逸らしてもなお、見つめてくる。
「で?」
「で?って何?……フフフ、もう着いたみたいね。」
そうして全員の視線が目の前の島へ注がれる。
「これが……“デビル・フロント”?」
「うわぁ……。」
「まぁ、ゲームっぽい島だな、うん。」
「えぇ……このゲームわりと常識的な感性だと思ってたんだがなぁ……。」
「すごーい!」
それは島というには少々異常な姿をしていた。
「普通こういうのって亀とか鯨とかそういうやつじゃないの……か?」
そこに居たのは“巨大なタコ”だった。
島の周囲にうねうねとその触手を絡ませ、頭の上に地面を乗せて泳いでいる。
そこには確かに文明を感じさせる街並みが広がっており、段々近づいていくにつれてその巨大さがひしひしと感じられた。
「デビル・フロント……悪魔の正面……いや、悪魔が示していたのは“デビルフィッシュ”つまりはタコ、フロントは……なんだろうな?」
ショコレータの呟きに、一同は答えられなかったが、ただただ、このゲーム内でもトップクラスの面々が目の前の光景に驚き、その身をすくませてしまったのだった。
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