ep16 6体満足

大規模拠点に近づいたことで黒の軍勢のモブプレイヤーもかなりの数がショコレータ他の前に立ち塞がっていた。


「ラァ!道あけなぁ!」


「俺達“マスターピース”に勝てるかよぉ!」


「ひゃっはぁ!ってかんじですねー!」


破竹の勢いで突き進むマスターピースの3人の目の前に、一人の幼女が立ちはだかる。

お雛様のような和装、それも地面に裾を広げ、袖もぶかぶかで明らかに自身の2倍以上の体格を持つ相手の服を着ているようなちぐはぐな姿。


「あぁ?こんな小さな配信者なんていたか?」


「どーですかね?Vtuberなら現実の体とは乖離した姿で配信者やっててもおかしくないですし、小学生でもワンチャン居るかもしれないですけど……?」


ショコレータは二人のように口に出さず、ただ目の前の相手にサイコメトリーを仕掛けていた。

そしてそれがもたらす情報に一人、警戒レベルを一つ引き上げた。


「あの女のクランらしい。気を付けろ。」


「フン!ボクは“チョコレート☆キャンディ”のアルア!【6体満足】アルア!悪いけどその地味な男以外はボクの相手をしてもらうよ!」


「幼女すら手籠めにしているなんて……キャンディナさんは外道ですか?」


「俺達で相手をしたらこの先で2対1になるんだろ?ウチのリーダーだけ行かせるのはちょいとばかし受け入れがたいよなぁ!?」


そんな叫びに対する答えは単純なものだった。


――バスバスバスバス!


威嚇射撃。

しかしそれを撃ち出した幼女は既に戦闘態勢に移っている。


「なんだってんだ……?」


「浮いてる?……いや、違う!あんなのありなんですか!?」


宙に浮かぶアルアの周囲には不可思議なものが浮かんでいた。

それは“腕”であったり、“足”だったりした。

そして何より目を引くものが“生えていた“。


「天使……?」


シスターの呟きはそれを現すのに最も適した表現だった。

和装の天使。

そう呼ぶのが最も正しいだろう。

壁画の天使のように翼を持った子供の姿をした相手。


「私が相手をします!二人は先へ進んでください!」


シスターは叫んだ。

ここから敵拠点まではもう目と鼻の先。

この先で最低2人の敵が待っている。

そんな場所に推しを一人で行かせたくないという思いから叫んだのだった。


「いくぞ!リーダー!」


「お、おう!シスター!頑張れよ!」


「ハァイ!推しにそう言われたら負けませんよ!」


「ボクを忘れないでほしぃなあ!“マシンガンバラージ”!」


宙に浮いた手足からショコレータの使う弾丸と同質のものが斉射されていく。

その先に居るのはバンデット。


「“フォールン・ドーン”!」


その弾丸が一斉に地面に着弾して砂煙を立てる。


「あなたの相手は私です!【選民崇拝】シスター・ピースフル・ワールド!推しの為、仲間のためにあなたを倒します!」


「和雨さんに頼まれたんだ!あなたを倒してバンデットもボクが捕まえる!」


お互いにただ一人、互いのリーダーのためにその戦端は開かれる。


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