ep14 オーバーリミット
一方、中規模拠点から少し離れた場所で観察していたショコレータ達に立ち塞がった二人は名乗りを上げていた。
「アタシはシェリア!クラン“オーバーリミット”の紅一点!そして……「同じくベヘリ。悪いが……。」
途中から被せるように男が自己紹介を始めたせいでシェリアはキレ散らかしていた。
「ベヘリ!まだアタシがしゃべってんだろうが!邪魔すんじゃねぇ!」
「……第一回で目立ったのはウチのリーダー、キャンディナ、ショコレータそして……あのバンデット・ケーニッヒだ。向こうの決着より先に目の前の相手を倒すぞ。」
「ねぇ!アタシがしゃべってたっつってんだけど!話聞いてる!?」
「聞いてる。だからさっさとやるぞ。“ナイフ”」
「アンタ地味なんだから少しは目立てっていつも言ってんでしょお!?はぁ~つら、だりぃ相棒と組むとこれだからやってらんねぇのよ!“トランセンデンス”!」
ベヘリはその手にナイフを。
シェリアは武器こそ呼び出さなかったものの、明らかに存在感が増していく。
「へぇ……“皮を剥ぐことに特化した近接スキル”と“単純なパワーアップ”ね。どっちも単純なスキル。負ける要素皆無って奴じゃん?」
「人の心ン中好き勝手除くのはプライバシーの侵害じゃない?アンタみたいな変態が“最強”ってのも陰キャみたいで気に入らないんですけど?」
「そう言いながら“アタシが目立って少しでもベヘリにチャンスをあげなきゃ”なんて思ってるあたり実はいい子ちゃんだな?」
「……ぶっ飛ばす!」
頭の中を覗ける相手に口喧嘩で勝てるわけがないと走る。
しかしショコレータには“サイコメトリー”がある。
そうそう攻撃は通らない。
――キィン!
ショコレータの足元へナイフが刺さる。
金属音と共にはねたナイフが転がるも、それを投げた相手に視線を一切向けない。
「今のを躱すのかよ……。」
「投げることを知っていれば、いや、“サイコメトリー”がある以上、お前らが立っていた場所を見るだけでお前らの思考は筒抜けだ。……こんなふうにな?“ストンプ”!」
その場で足を振り下ろす。
そして右後方300メートルの場所にその“踏み潰し”は発生する。
「ぐぁあ!……クソッ!距離を取っても意味ないのかよ!」
移動先へあらかじめ“踏み潰し”を発生させることで必中の攻撃となる。
「アタシを忘れてんじゃねぇよ!」
「おっとそれは危ない。」
思考を読むことで次の攻撃も先に躱しておく。
“チェインクラッチ”。
両手から出現した鎖で相手を拘束するスキル。
「逃げるなぁ!“チェインスナッチ”!」
見通しが甘い。
そこはまだ届かない。
「クソッ!届かないか!」
そう。
二人とも気づけていないのである。
ショコレータ・ショコランティエという男を倒す手段はすでにかなり限られているのだ。
一度でも目にした相手は足跡などの痕跡から常に思考を読まれるので不意打ちやだまし討ちは無効。
正面切っての戦いではプロ顔負けのアクロバットを行える相手に先読みでも躱せないような攻撃を行えなければいけない。
“逃げに徹していれば多人数で攻撃できる”なんて思考も読まれ、逃げには徹底的に“ストンプ”による座標攻撃が飛んでくる。
つまり、ショコレータへの攻撃が有効になる最低条件とは……。
・回避不可の広範囲攻撃を繰り出す。
・未来視できても躱せない速度の攻撃のラッシュ。
その2パターンしかないのだ。
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