ep8 マスターピース
アンブロシアに併設された酒場で、3人はジョッキに入れたカクテルで完敗していた。
バンデットへ現実世界でのスキル使用可能になった事を伝えたところ、“え?動画化しちゃまずいか?”とか言ってきたのでそこら辺の事情を話しつつイベントに向けての会議をしようということになったのだ。
「それではクラン【マスターピース】の終結を祝してカンパーイ!」
もう何十回目かの音頭を取ったのはシスターだった。
「……なぁ、結局マスターピースってなんて意味だ?完成品とかそんな意味だった気がするんだが……。」
「“最高傑作”って意味合いが一番強いと思うぞ?なんでそれをクラン名にしたのかは知らんが……。」
バンデットとショコレータは飲みまくりのシスターを横目に突然決まったこの決起会?を利用して情報交換している。
「このRANK5の力はやべぇな?俺のスキルはどれも目潰し程度の力だったってのにここまで好き勝手出来ると流石に“チート野郎”呼ばわりされても否定できねぇぞ?」
「俺は対人特化みたいなスキルセットだしな……範囲化したり牽制に使えるストンプ、火力馬鹿のバレットパレット、相手の戦略を丸裸にするサイコメトリー……お前の方が戦闘力自体は高いだろう?やっぱり傍から見たらお前の方が目立つだろうな。」
「砂塵で砂嵐を起こしつつ砂の刃で“削り取り”、砂丘で足元を崩しつつ蟻地獄で生き埋めにして、最終的には黄砂で大太刀作って一撃必殺を狙っていけばいいからな……。」
「そういや砂塵の刃と黄砂の太刀って何か違うのか?全く分からなかったが……。」
「砂塵はあくまで砂嵐を生むスキルだからな……当然ダメージはほとんどないスキルを元にしてるから威力が低い、黄砂は元からエリア全体にジリジリダメージを与えるスキルだからそれを集約して太刀の形に再定義している分ちゃんとした威力が出るんだよ。」
二人で己のスキル、その再定義の仕方の話題をしているとシスターがさらに割り込んできた。
「ちゃんと飲みましょうよぉ!ほとんど酔えないこんなお酒じゃあ一樽呑まないと酔えませんよぉ!」
「お、おう。シスターのスキルも聞いていいか?せっかくクランで次のイベントに挑むわけだし……な?」
シスターの押し付けてくる酒を躱しながらシスターのスキルを聞き出す。
シスターは嬉しそうに自分のスキルを並べていくのだった。
「まずエクスチェンジは自分と対象のバフ・デバフ・怪我を交換するスキルで、再定義で他人同士を対象にできるようにしました!」
「それ正直一番卑怯だよな?下水道の時そいつのせいで何もできなくなったからな。」
そういえば下水道でキャンディナと戦った後に出待ちしていたバンデットはズタボロの怪我を移されて瞬殺されていたんだったか。
「それでもこのスキル自体はとどめを刺せるような主力じゃないんですよねぇ……結局、地力で負けてる相手には勝てませんし、仲間に使うにしても自己犠牲のヒーラーといった程度なんですよ。」
「それでも強いのは間違いないと思うがなぁ……。」
「あぁ、フォールン・ドーンに決定力が全然ないからですかね?落下感を与えるスキルが元なせいで実際に重力系の攻撃に見えて全然攻撃力がないんですよ、だから私は常に火力不足に悩まされているわけで……。」
「鞭を使え鞭を!一応残っているだろう!?」
「いやぁ……鞭は残したかったんですけどインパクトを鞭化したせいで使い勝手が……。」
そう言ってシスターはスキルを発動する。
ショコレータのバレットパレットのように空中に半透明の鞭が出現する。
「鞭での打撃を発動するって再定義になっちゃったんで一撃入れたら消えちゃうんですよ。」
そう言ってバンデットのケツをひっぱたいた途端、鞭は消えてしまう。
「まぁ、使いやすい攻撃スキル無しと……。」
「なんで叩いた!?なんでケツ叩いた!?」
「まぁ、クラン【マスターピース】はアタッカー2、サポート1って感じで頑張ろうか。……どうせキャンディナくらいしかRANK5は居ないだろうしな。」
そんな会話中に一つのウィンドウが自動的に開くのだった。
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