ep5 盗賊の意志
“お前の価値を示してみろ”
その一言はバンデットにとって致命的と言っていい。
「俺は!俺はぁ!」
彼にとって、自分の価値なんてものは存在しない。
「お前は何を求めてやってきた?何を求めてストリーマーの道を選んだ?」
容赦のない質問。
その言葉がバンデットを苦しめる。
「どうして俺には何もない!どうすれば俺は“俺”になれる!?」
大太刀を抜き放つ。
バンデットは支離滅裂に叫びながら、己の意志をここに示す。
「お前ばっかりどうしてそんな風になれる!?」
大太刀を振るって襲い掛かるバンデットのそれを紙一重で躱していく。
「まだ足りない。お前の価値を示せ!」
「俺に価値なんてあるかよ!皆が皆思ってる!」
――ブゥン!
大太刀の生み出す風切り音が大きなうねりを生んでいく。
「俺はお前の出来損ないってなぁ!最強じゃないVRゲーマーってなぁ!」
――ブゥン!
「なれるかよ!?そんなのは才能だろうが!それを努力で補えるか!?補えねぇよ!だから頭数増やしていくんだろうが!」
――ブゥン!
「お前に勝つのは無理だ!だったら数で、圧倒的な物量でお前を超える!そう考えて何が悪い!何が可笑しい!」
――パァン!
大太刀を掌で受け流す。
その音が大きく響いてバンデットの意識が振れる。
「違うだろ?俺を超えたいんじゃないだろ?」
――ダァン!
弾丸を産み出して撃ち出していく。
それはギリギリのところでバンデットには当たらない。
その音は彼の意識を向ける為のもの。
「お前は最強VRゲーマーを目指してストリーマーになったわけじゃないはずだ。」
――ダァン!
「思い出せ、お前はどうしてストリーマーになった?何を求めた!」
――ダァン!
「目立ちてぇ!派手に生きてぇ!それのどこが悪い!?何が悪い!?」
――ブゥン!
「そんなものがお前の欲望か!?違うだろ!?」
――ダァン!
「お前はどうなりたかったんだって聞いてんだよ!」
――ダァン!
「俺は、俺はぁ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます