第四章:世界が望む神秘の狂騒
ep1 うんえいとこたつ
ミスティカ・アナザーワールド開発運営会社“ゾシモス”ビル内。
「あったけぇ……。」
部屋の中央に置かれたこたつに足を突っ込んだ科学者風の男はほぅっと息を吐いた。
こたつの上に置かれたカセットコンロ、土鍋。
その中からおでんを皿に取り分け貪るように食べていた。
「最近は寒くてしょうがないぜ。暇だしよぉ。」
そんな呟きを聞いたのか、部屋の中へ男がやってきた。
ニコラス・フラメル。
賢者の石を作り上げ、不死になったと言われる錬金術師、魔術師とも呼ばれる男。
「ジェス、そんなに暇ならさっさとイベントを企画しろ。……RANK5が生まれればポコポコ魔術師も増えていくと言ったのはお前だぞ?」
「ハフッ!ハフッ!ハフッ……。」
「食う手を止めろ!俺にも皿を寄こせ!」
「しょうがねぇなぁ……ほい。」
そう言って小皿を渡すジェス。
すこしわくわくした様子でおでんを更に移していくニコラス。
「まぁ、食いながら聞けよニコラス。本来俺達の予定していた“ミスティカ・アナザーワールド”を利用した魔術師量産計画……いや、神秘の時代到来計画はRANK5が生まれた時点で完了だった、そうだろ?」
「フー、フー、フー……そうだな、魔術師が世間に認知されればその時点で爆発的に魔法使いとそれに触発された魔術師が生まれ、神秘の時代が訪れるはずだった。……あっつ!お前少し火が強いんじゃないか?」
「猫舌め……だけど実際には魔術師は認知されていない、それは何故だ?」
ニコラスはおでんが冷めるのを待ちながら思考する。
「……まぁ、現在のRANK5となった3人が全員魔術を隠しているからだろう。なぜ3人とも隠しているのか……それはわからないがな。」
「おっと、少しはSNSも見なよ。今RANK5になった3人は全員”最強VRゲーマー・ショコレータ・ショコランティエ”の関係者って事はみんな知ってる事だぜ?」
「じゃあそのショコレータ・ショコランティエが魔術のことを秘匿するように仕向けたのか。フー、フー、フー……よし。」
「いいや、隠してるのはその嫁さんっすねー。ほれ、財園グループの女帝さんっす。多分自分たちの魔術がある程度外敵を排除できるくらい強くなるのを待っているんすよ。」
――ドバドバ!
「おい!おでんにうどんはないだろ!……だがその女がいつまで隠し続けるか……困ったな。」
「うどんはなんにでもあうんすよねー……まぁそんなこと許すわけもないんですけどねー。」
――ブゥン
ゲーム世界のようにウィンドウを作り出し、そこへ色々と入力していくジェス。
「まっこんなもんでしょ。」
第二回ストリーマー全員参加のPVP大会!
サービス開始3カ月を記念して大規模イベントの開催が決定しました。
今回はなんと!!
クラン戦です!
入賞商品は“金塊1kg”!
現実世界ではこれを求めて何度も争いが起きた曰くつきの資産アイテムです!
特殊決戦フィールド“ロスト・ムーン”にて行われる集団戦に参加しよう!
時間経過とともに消滅していくマップ上で最後に立っているのはどのクランか!
当日の様子は全世界同時配信され、全編フルでまとめたコンプリートボックスの販売も予定しています!
「適当だなぁ……。」
「うどんもいい感じになってきたっすねぇ……。」
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