ep12 メロゥ・ディー
気付いた時にはもう手遅れだった。
自分の体は半透明になっており、周囲の状況も一変してしまっていたのだった。
「ここは……?」
小さな集落だった。
お世辞にも綺麗とは言い難いこの集落は藁のような植物の茎で作られた……いや、編み上げられた住居に住んでおり、煮炊きする様子もなければ子供の活気すら感じられなかった。
「……ホームレスの段ボールハウスみたいだ。」
これは現代人的な感覚かもしれない。
本人たちはこれで幸せなのかもしれない。
だが、ここにいる人たちの顔に明るいものは感じられなかった。
――トテトテトテ。
目の前を二人の子供が走っていった。
男の子を引きずるように引っ張っていく女の子は12歳くらいだろうか。
まるでこの二人だけが公園に遊びに来ているかのような明るさだった。
目立つそれを追いかける。
「メロゥ、ここまでくればもう大丈夫だよ!」
「待ってよディーちゃん、またこんなところまで連れてきて……。」
二人の子供は1キロくらい走っただろうか、そうして湖の傍まで来てやっと話し始めたのだった。
「メロゥにはいつもみたいに私のお客さんになってもらわないといけないんだから!」
そう言って少女は唄い出す。
まだまだ技術不足感が抜けないが、才能を感じる歌声だった。
少女の声はよく響き、聞くものを魅了するだけの力があった。
しかし。
――バチィ!!
電撃が走った。
その光は少女に命中し、一瞬のうちに少女を気絶させたのだった。
「ディーちゃん!」
少年は少女に駆け寄るが、何が起こったのかわかっていないようだった。
――バチィ!!
そして再び電撃が少年の意識を奪う。
「おぉ~、今日はいい獲物が獲れたな!……女の方はブサイクだが、これでも女だ、それなりにはするだろ?」
顔のない男、革鎧に身を包んだ何者かが現れ、彼等を担ぎ上げるように持ち上げると、そのままどこかへ連れ去ってしまうのだった。
――あなたと過ごしたあの日々はもう戻らない
――あなたが私を呼ぶ声はもう聞こえない
――私の声が不幸を呼んだから
――あなたと一緒に居られるのなら
――あぁ、あなたが一緒に居るだけでよかった
――あなたと二人で眠りたい
――あなたとあの時に帰れたら
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