ep3 傭兵ギルドからの依頼
――アンブロシア併設酒場。
ゲーム内で暇なストリーマーたちのたまり場となっているこの場に周囲のプレイヤーとは毛色の違う装いのプレイヤーがいた。
黒いキャソックに赤いストールのその男は“最強VRゲーマー”と呼ばれた男、ショコレータ・ショコランティエだった。
「はぁ……だりぃ……。」
あれから1週間。
ステータスが消滅したことでレベリングの必要も無いので狩りはしていない。
クエストという名の依頼でゲーム内貨幣だけは稼いだが、強くなっている感覚は全くない。
「なんかいい方法ねぇかなぁ……。」
そう言いながらうっすいカクテルのような酒を一口飲みこむ。
そんなことをしていては当然彼女に小言を言われてしまう。
「狩人なら狩人らしく稼いできな!他の客の迷惑だよ!」
樽のような女、酒場の女主人がそんなことを言って追い出そうとするもショコレータはヒョイっとコインを投げる。
「もう一杯……酔えねぇ酒なんて酒じゃなぁい~!」
「はぁ……金払いはいいんだから。」
女主人がビンに入ったジュースと酒を持って戻ってくると、ドン!と置いて去っていく。
「くぅ~……最高だなぁ……現実なんて糞さ、女なんて糞さ!」
「そうかい、そんなお前に仕事だよ!」
今度はアンブロシアの主人がやってきた。
酒場の女主人は樽のような女だが、アンブロシアの主人はかなりの筋肉美人だ。
初日にナイフ投げでボードを示していた時から思っていたがやはりヤバイ。
「美人の頼みなら聞かざるを得ないけど~、地獄の沙汰も金次第っていうし?」
「報酬はたっぷりだ!なんてったって“傭兵ギルド”からの回し物だからな!」
「“傭兵ギルド”なんてあったのか?見たことも聞いたことも無いが?」
掲示板やSNSはある程度見ているがそんなものの存在は知らない。
もしかしたら強くなる手段の一つとして依頼以上の利が得られるかもしれない。
――ドン!
「やめときな!傭兵ギルドなんて……あんな連中に関わるのは馬鹿だけだよ!」
酒場の方の主人まで混ざってきた。
「あんな連中?傭兵ってのは金で雇える戦士……狩人ってことじゃないのか?」
「そんな馬鹿な事あるかい!あいつらは数年前までなんて言われてたと思ってる?」
「やめな!この仕事をこなせるのは“優秀な狩人”だけなんだ、断られたら困るんだよ!」
「だまりな!ちゃんと話はしておくべきさ!あいつらは数年前まで“奴隷商人ギルド”って名前だったんだ、そんなことも知らずに傭兵ギルドから回ってきた依頼なんてやらせるなってんだよ!」
“奴隷商人ギルド”。
その単語からは決していい印象を受けない。
むしろ後ろ暗い印象を強く感じる。
「スラムの人間たちは多かれ少なかれ奴隷商人ギルドの残した“遺産”だよ。そして“狩人ギルド”であるアンブロシアも過去は“マンハンターギルド”だった。だからこそアンタは何も知らずに依頼なんて受けちゃいけないんだ、わかるね?」
「あんまりウチの狩人に変なことを吹き込まないでもらおうか?」
「だまりな!過去にあった“事実”のどこが“変なこと”だい!」
「それで?俺としてはその話を聞いておきたいんだけど?」
結局、俺の望み通りに話を聞くことができた。
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