ep21 襲来

――――ピンポーン!


ログアウトした瞬間、部屋の中に何かの音が響く。

その音はどうやら玄関からしていたようだ。

しかしもう体が限界だ。

ベッドに倒れ込むともう一度音が聞こえる。


――――ピンポーン!


知るか。

また後で来い。

俺はもう寝たいんだ。

そう思っていると突然、耳元に声が聞こえた。


「フフフ。お邪魔します。」


その一言で、完全に意識が戻った。


「なぜ!?」


「フフフ。まずはこれまでの非礼を詫びに、そして鍵の事ならもう私にそんなものは無意味だということも理解してくださいね?」


キャンディナ・キャンディベル、いや、財園 和雨が自分の部屋に、それも今倒れ込んだベッドの中へ潜り込んでいた。


「まてまてまて!どうやって入った!?」


「そのお話も重要ですから見せてあげますね?“リングアウト”。」


その瞬間、自分の体はベッドから離れたソファーに移動していた。

ここは現実世界であるというのに、だ。


「おい……どうなってる?金持ちにはまさかテレポートを操れるような技術があるのか?」


「ほら、早くこっちに戻ってきてくださいな。」


布団を少しめくっておいでおいでと手招く彼女の隣に入る気はしないが、彼女を追い出すためにはベッドから引きずり出さねば、と思っていたらするりとベッドに押し倒される。


「まぁ、そういうわけで私は“インファイト”が使えます。あなたの傍へテレポートし放題の私にこの部屋の粗末な鍵なんて無意味だとわかるでしょう?」


「変態がテレポートしてセルフデリバリー……?」


「今日はお互い疲れてしまったでしょう?このベッドは少し硬いのが残念ですがご一緒させてもらいますね?」


「ふざけんな!帰れ!お前、お前マジでなんなんだよ!?」


もう無理。この女のそばに居たくない。

今度は自白剤だけじゃなく、何を飲まされるかもわからない。


「あなたの未来のお嫁さんですよ?子供ももう作ったじゃないですか?」


「あの蛇のことだよな!?まさかあのホテルで一発とかじゃないよな!?」


「フフフ……そんなに興奮しないでくださいね?まぁそう言うと思ってたので無理やり寝かせますね?」


そう言ってベッドの中で彼女はグリンと体勢を変えてマウントポジションへと移る。

その手がこちらの細い首を押さえつけてくる。


「は、お前……マジで……。」


次の日の朝、自分の腕の中で気持ちよさそうに眠る彼女をどうすればいいのかで悩むことになるのだが、それもまた運命。

決して彼女の美貌に負けたわけでもなければ、間違いを起こしたわけでもないのは事実である。

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