ep14 絶望のRANK UP
その言葉は、まさしく“愛の告白”だった。
しかし、ショコレータは目の前の女性に対し、気持ち悪いという感情ばかりが胃の中を荒らしまわるような感覚と共に芽生えていた。
「いやだ、お前のそれは……受け入れられない。」
何とか絞り出した声に彼女は答える。
「あなたが悪いんですよ?女性とコラボ配信なんて今まで全然しなかったのに突然するから。私もゆっくりと、こうして配信者となって少しづつ距離を詰めていっている途中だったのに。」
「あの日、お前の目的は……いや、お前が俺を炎上させたのは……!」
「貴方に悪い虫がつかないように、そしてあなたが私を認知する前に一度抱いてもらうために行動したのがあの日。こんなにあなたのことを思って行動しているのに受け入れられないんですの?」
「俺のことを思って!?俺を炎上させたのかよ!?どの口で言う!」
「私という、少なくとも日本で最も優秀な女、そして日本で最も美しい女しかあなたは知らなくていい!そこらに落ちてるようなゴミみたいな女があなたに触れることがどれだけ私の誇りを傷つけると思ってる!?……あなたが童貞で本当に良かった。間に合った。あの日、酔っぱらい、自白剤で本心を語ったあなたがどれだけ私を安心させたか!それがどうしてわからないの!?」
「自白剤まで使っておいてそんなことを言う!?馬鹿にするなよ!?俺にもお前が狂ってることぐらいわかるわボケェ!」
「あなたは私の理想の夫として、生涯を過ごせばいい!VRゲームを配信すらしなくていい!ただ、私の隣に居るだけで満足だと言っているのになぜそれがわからないの!?」
「わかるかボケェ!」
ショコレータはおもむろに銃を取り出す。
こんな頭のおかしい奴の相手なんてしていられない。
キルして逃げる。
それしか手はない。
――ヴゥン
ウィンドウが目の前に出現する。
もう0時になってしまったようだ。
イベントの報酬である“神秘の欠片”が配られた。
「フフフフフ……運命が言っている!私にあなたをモノにして見せろと!」
彼女はウィンドウに拳を叩きつけた。
「ランクアップ!」
「もちろん答えは“イエス”よ!」
「ランクアップ!」
眩い光に包まれる。
その光はやがて治まっていき、変態ストーカーの逆レ〇プ犯の姿が現れる。
「【独奏淑女】キャンディナ・キャンディベル……RANK5の力、これがあなたをモノにしろという運命が出した答えよ!」
彼女の姿はプレイヤー共通のあの茶色いローブではなくなっていた。
真っ黒の全身タイツのようでいて光を反射する素材。
そのヌラヌラと光る姿は煽情的に体のラインをくっきりと浮かび上がらせる。
首から上と掌のみ地肌が見えている。その姿はキャットスーツと呼ばれるものだった。
自分を狙う変態が変態のような姿をして襲い掛かる光景は、正気を失いかねないインパクトを持っていた。
「ふっざけんなこの変態!」
全力で出口へと走る。
しかしそれを彼女が許すはずもない。
「“インファイト”!フフフ……逃げられるとでも?」
逃げる背に覆いかぶさるように転移してきた女がそのまま地面に叩き付ける。
下水道の汚れが跳ねるのをものともせず彼女は首筋に軽く歯型を付ける。
「フフフ……“あの日”の再現をしましょう?今度はあなたの意識もちゃんとある。あなたが私を愛するその時まで、あなたの心が正直になるまであなたを愛し続けてあげる。」
下水道で、ムードもひったくれもない中耳元でそんなことを言ってのける彼女の狂気に、恐怖と言う感情はその首をもたげた。
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