ep12 あなたの声を探していた
23時30分。
約束をした時間。
約束した場所。
そこでショコレータは人を待っていた。
「……。」
緊張する。
さっきから心臓の音が、うるさいぐらい胸を叩いている。
この下水道ダンジョンの最奥、ボス部屋で立ち尽くす姿は全世界に配信されている。
ミスティカ・アナザーワールドの契約によって一部ストーリーとステータス画面を除くすべての情報はミスティカ・アナザーワールド公式サイトを通して全世界に配信されている。
「さて、“神秘の欠片”の配布まで30分。リスナーは皆イベント1位の配信を見に来るだろう。」
そう独り言をつぶやく。
こんなことに意味はない。
だが、その声に応える相手がいれば話は別だ。
「そうだね!そこに人気も持ってる第2位まで来るなら視聴者独占だよね!☆」
下水道から歩いてきた人物。
それはイベント第2位のキャンディナ・キャンディベルだった。
「御呼ばれしちゃった!☆」
「こんな汚い所ですまんな……他に人が来ない場所を知らなくてな。」
「それで?僕に何の用なのかな?☆」
白々しくそう言った女に、告げる。
「お前だろう?俺をあの日嵌めたのは。」
キャンディナは顔を変えずに答える。
「何のこと?あなたを嵌めたって?僕知らないなぁ?☆」
「正直理解できていないんだよ。俺にはお前の思考が理解できない。2年もそのキャラで配信して来たんだろ?どうしてあれだけの美人が“ガワ”を被ってVtuberなんてしている?」
ズケズケと言う言葉にキャンディナは表情一つ変えずに反論する。
「Vtuberにリアルのことを聞くのはバッドマナーどころじゃないよ?☆」
「俺は最初、ミスティカ・アナザーワールドへの参加を止めたかったんじゃないかと思った。だがそれならどうしてあの電話口のお前は俺の参加を喜んだ?お前は何のために俺を嵌めて炎上させた?」
「何のことかわからないよ?☆」
女はずっと表情を変えずに答えてくる。
「だから俺は知りたい、お前の目的とは何だ?何がお前を突き動かした?」
その質問に、キャンディナ・キャンディベルは、あの時の女はとうとう答えた。
「フフフフフフフフフフ……フフフフフフフフフフフフフフフフフフフ!」
彼女は抑えるような笑いを止められなくなっていた。
そうして数秒、笑い続けた後に口を開いた。
「……どうしてわかったの?」
「お前のその笑い方だよ。まるで我慢するようなその笑い声、癖になってるんだろ?あの日、お前はずっとそうやって笑っていた。そして昨日、あの戦いの最中その特徴的な笑い声をお前は漏らした。」
「フフフ……流石ね?“最強VRゲーマー”にゲーム内で会ったのが失敗かしら?」
「ようやく見つけたぞ、お前の目的を話してもらおうか!」
「フフフ。私の目的はもう半分達成してるのだけど……まぁいいわ。」
女はその口元を醜くゆがめ、語り始めた。
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