ep10 そして二人は共に起き上がらない
キャンディナの右拳はアッパーのように下から振り上げるような軌道を描いていた。
だからこそ、ショコレータの体を空中へと一瞬浮かせていた。
「させるかよ!」
このままでは空中に浮いた体に連撃を受けてしまう。
かといって拳は使えない。体勢を崩した自分ではリーチが足りない。
それに地面から浮いた状態ではまともな威力を出せず、押し切られてしまうのだから。
だから、だからこそ。
「”ストンプ”!」
空中で力が抜けるならスキルを使えばいい。
腕では届かないなら足で。
空中での正面に向けたヤクザキック。
「おっと……”インパクト”!☆」
彼女の右腕が光る。
こちらの前蹴りに対してその拳で対抗してくる。
――パァン!
お互いのスキルがぶつかった。
その衝撃で空気が破裂するような音が響く。
だがこれで距離をとれた。
仕切り直して改めて狙えば。
「”インファイト”!☆……フフフ、逃げられると思った?」
「!?」
再び目の前にワープしてきた女の拳に対して今度はそれを体の軸を回転させる要領で躱す。
「同じ手を喰らうかよ!」
体の軸を回転させたことで今ならこの拳が届く。
「”裏拳”まで読めてるよ!☆」
そこまで読み切った女はちゃんとその体を逸らすことで裏拳も回避していた。
だが。
「“こっち”は読めなかったらしいな!」
そのまま勢いを緩めずに体勢を低くする。
そしてドロップキックのように体を浮かせ、回転に身をゆだねる。
全身を使った回し蹴り、いや、回しドロップキックと言った方がいいそれは確実に女の両足を払った。
「フフフ……”そう”でなくっちゃ!☆」
体勢を崩したと言ってもお互い体を起こす一秒の時間がある。
先に起きたほうが勝者となるのは明らかだ。
起き上がれない様に攻撃し続けることで確実な勝利が取れるのだから。
だからこそ、女もそれを理解していたからこそ、足に力を込めて立ち上がろうとした。
「残念……”それ”はハズレだぜ?」
その力を込めた足へ、地面についた掌へ。
容赦のない腕が迫る。
「へ?」
瞬きをする間もないほどの早業で女の背を全体重で潰し、地面に縫い付ける。
「関節技がどれだけキクかなぁ!?」
ギチギチと両腕を締め上げていく。
最早ショコレータは自身の銃による決着を狙っていなかった。
スキルでワープしてくる相手に銃はほぼ無意味、近接格闘は女の得意分野、ならば勝ち筋は一つしかない。
「”これ”を狙ってたんだよ!お前がワープしたあの瞬間からなぁ!」
女の表情は見えない、キックやパンチと違って関節技がどれだけPOWERを削るのか知らない。
だが、この体勢になった時点でほぼ勝ちなのだ。
「”ストンプ”!」
ほぼ0距離の足で踏み潰す。
スキルは命中さえすればきちんとダメージが入る。
もうこの女に回避する術はない。
「”ストンプ”!」
2度、3度と繰り返すうちに女の体はポリゴンとなって消えていった。
【第一回イベント】
【浮遊島サバイバル!奪い合う神秘!】
【優勝者が決定されました】
【GAME ENDED】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます