ep8 Aダッシュ
居合によって加速した体がショコレータの元へと吹き飛んでいく。
撃ち抜かれた心臓から崩壊したポリゴンを撒き散らし、その頭部がショコレータの目の前に落ちる。
「なぜだ!?俺は居合を発動した!ガード判定が出るはずだろ!」
「やはりな。“ガンスリンガー=ピアッシング”はVITだけじゃなくガード判定も無効化するスキルだったわけだ。」
シックスシェルの炸裂弾の威力はあまりにも高い。
あれは6発装填できるのに対しピアッシングは1発しか装填できないのにPOWER消費がほぼ同じときた。
その差はVIT無視によるものだけのはずがない。
ピアッシングには隠された効果があると踏んでいただけにこの結果は予想の範疇に収まっていた。
「クソ!そんな効果、無かったら俺の勝ちだったのに!」
「ならねぇよ、大太刀の振りは目で追えたからな。どのみち躱してズドンだよ。」
「ちっく……しょうがぁ!」
ポリゴンとなって消えたバンデットの残したRANK2の処理に映ろうと振り返ったときにはもうすでにすべてが遅かった。
「シスター!」
ポリゴンとなって消えていく彼女は周囲のプレイヤーを倒しきっていた。
そんな彼女に駆け寄ると彼女は体を預けるように倒れ込んだ。
「推しの腕の中で消えるんですから私としては満足ですね……応援してますから優勝してくださいね?」
「あ、あぁ……。」
「あ、それと後でサインください!住所送るんで!あ、それならついでにご飯行きましょう!それとそれと……えーっと、えっとえっと!あ……。」
最後まで口元が残っていたが完全にポリゴンとなって彼女は消えた。
なんとも言えない空気が漂う中、繰り返される銃声だけが彼の生存を示していた。
【残りの人数が10人を切りました。】
【5分後にエリアAを残して全てのエリアが崩落します。】
【崩落に巻き込まれたプレイヤーはキルされるのでご注意ください。】
「……もうかよ!」
早すぎる。
まだE~Jの外周エリアが残っているのにAだけを残して崩落なんて場所によっては間に合わなかっただろう!
「あークソ!どうせもう10人も居ねぇんだ!走って向かうぞ俺は!」
渓谷を抜けてもうじきエリアAに入れると思ったそのとき、隣から声が聞こえてきた。
「ハァイ!マイネームイズコジロウ!エリアAに入ってすぐに戦闘は嫌なんですけど別々に逃げませんカァ!?」
ラッパーのようなドレッドヘアーの黒人が話しかけてきたのを無視して走る。
こんなめんどくさそうなやつは無視するに限る。
「オーゥ!無視ですカァー!ショッキングデース!」
「Aに入ったら俺は右に曲がるからお前は左行けよ!それでいいだろ!?」
「オーゥ!ニホンジンシンセツネー!」
「お前さっきはもっと流暢に喋ってたろ!?キャラ付け重いわ!」
「エセガイコクジンスタイルのストリーマーはオキライデスカァ!?」
「どうでもいいかなぁ!?」
「ならモンダイナイデスネー!……あ、ノープログレムネー!」
「適当だろお前ぇ!」
何とか崩落前にエリアAへ辿り着いた二人は無事別れて探索へ向かったのだった。
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