ep13 EXPERT
これまで出てきたゴキブリ型の雑魚を倒すのに、わざわざスキルを使う必要なんてない。
踏み潰せばいいだけだ。
“ストンプ”は消費がほとんどないのもあって一応使っているが、実際には使う必要もない。
「でもなぁ!」
つまり体術はきちんとダメージを与える手段として存在しているということだ。
「指先さえ気を付ければお前なんて怖くも何ともねぇな!」
とうとう少女へと肉薄する。
拳も、蹴りも、全身が武器となって少女を襲う。
「……“ライフリターン”。」
「回復したところでもうお前は怖くねぇよ!」
“最強VRゲーマー”なんて呼ばれていたのは伊達じゃない。
パルクールだろうが、ロッククライミングだろうが、トライアスロンだろうが格闘技だろうがVR世界であればその道のプロを超える動きをして見せるからこそそう呼ばれたのだ。
「……“テーザー”。」
無理にこちらを狙うその指に合わせて銃口を向ける。
「“そう”だよなぁ!?躱しちまうよなぁ!?」
撃たない。
威力の高い銃を使えば隙を生んでしまう。
だからこそ、銃を向け、回避しようと姿勢を崩したところへ殴打を浴びせていく。
これだけの動きで少女のスキルを封印できる。
「殴り続けていればお前は倒れる!そうだろ!?」
「“ライフリターン”。」
「“そう”だよなぁ!?もう回復するしか手はねぇもんなぁ!」
完全にこの戦いはショコレータによって支配された。
最早どれだけ頑張ろうと、少女の敗北は確定したのだ。
「“ライフリターン”……。」
もう何度目だろうか。
10を超えてからは数えてすらいない。
3時間は戦っている気がする。
そんな時、少女はとうとうこのループを抜け出したのだった。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
漏れ出るような叫び。
それと同時に少女は自らの腕で、その目を貫いたのだった。
「……は?」
もうすでに毎朝のコーヒーを飲むかの如く相手をしていたショコレータは一旦距離をとった。
「行動変化?……まさか第二形態?」
ブチブチと何かを引きちぎるような音と共に少女はそれを投げ捨てる。
白い触手のような虫を。
「……自滅?」
「……“白き静寂なる世界へ”。」
その言葉と共に。
世界が塗りつぶされていく。
限りなき白に。
全てを塗りつぶす白に。
下水が透明になっていく。
壁の汚れの一つ一つが消えていく。
この場はすでに、一種の聖域と化していた。
「ゲンデイールに会いたい。」
少女の姿は変化していた。
見るものによっては神々しくも感じただろう。
見るものによっては悍ましくも見えただろう。
「……“ブレッシング”」
白き髪は金がまばらに混ざり、まるで意志を持つかのように蠢いている。
赤き瞳は眼球全体を赤く染め、視線すらわからなくなった。
こめかみから伸びた角は肥大化し、腕のような長さを持って後方へ伸びている。
両足には人間の物ではない巨大な爪が生え、臀部から伸びた尻尾がゆらゆらと揺れている。
彼女の言葉と共にそれらは強く光り輝いて、ゆらゆらとオーラのようなものが立ち昇る。
「……私の翼。」
「私の翼!」
叫ぶ。
その叫びは何のためか。
「私の翼はどこだ!」
「会いたい!」
「ゲンデイール!何処にいる!」
何度も叫ぶ。
彼女は何のために叫ぶのか。
【SUB STORY QUEST】
【下水の姫と小さな翼】
【EXPERT LOOT】
【EVENT BOSS BATTLE】
【BATTLE START】
【条件を満たしたためEXPERT LOOTへ派生します】
【報酬が変化します】
【難易度が上昇します】
【彼女に滅びを与えましょう】
【それこそが彼女への手向けとなるでしょう】
【もう彼女の望みは叶わない】
【もう彼女を罰する人も居ない】
【只々生き永らえてしまったことを後悔するほかない】
【彼女に死を】
【彼女に救いを】
【愛捨て去りし比翼の天使】
【想い人は愛故に滅び醜く生きる己のみ】
【なればこそ、今こそその責を】
【今こそ罪の清算を】
【罪人】
【インセール】
【愚かで醜い天族へ】
【せめてもの滅びを】
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